「事件は風化してはいけない」カエル少年失踪殺人事件 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
事件は風化してはいけない
韓国三大未解決事件の一つ、“カエル少年事件”の映画化。
年代も作風も傑作「殺人の追憶」を彷彿させるので、「殺人の追憶」が好きな方は必見。
この事件について全く知らなかったので、まず見る前に、事件についてちょっと調べてみた。
1991年、「カエルを取りに行く」と告げて5人の小学生男子が行方不明に。必死の捜索でも見つからず、事件の関心が薄れ始めた2002年、失踪した5人と思われる白骨死体が発見される。検視の結果、他殺の疑いが。しかし、容疑者の特定も出来ぬまま、2006年に時効となった…。
映画もほぼ史実通りに進む。
またこの事件には、失踪した少年の親が容疑者としてあらぬ疑いがかかったり、白骨死体発見時に警察は自然死として報告したりと汚点もついて回り、それらも包み隠さず描かれ、モヤモヤとした気持ちをも感じる。
脚色されているであろう部分もある。事件について調べ始めるTVプロデューサーのカンと大学教授のファンがそれだ。
ファンはガリレオばりの(?)推理で一人の容疑者を浮かび上がらせるのだが、それが失踪した少年の親、即ち冤罪であった。
結局二人共、自分の名声を上げる為にしか事件に向き合っていなかったのだ。
無論、その後の二人の立場は言うまでもないが、心痛察したいのは、疑われた親。あらぬ嫌疑と事件への名残を背負いつつ、急逝してしまうのだから。
白骨死体が発見され、カンは再び事件に関わる事になるが、ファンはまだ性懲りもなく実親犯人説を唱えており、カンもさすがに怒りが爆発する。
今度こそ事件に真っ正面から向かい合った時、一人の容疑者が浮上する。
その容疑者もカンの娘に接近するなど挑発し、そして遂に対峙する…。
実際は有力容疑者も浮上しなかったので、クライマックスの下りは脚色である事は一目瞭然。少々、蛇足には感じた。
未解決事件故、オチは分かり切っているが、ラストは被害者家族の悲しい思いが明かされ、胸に迫るものがある。
何年経っても、どんな些細な事であっても、例えそれが嘘であっても、被害者家族は事件を風化させたくないのだ。
脚色部分を蛇足と見るか、映画的味付けと見るかで評価も分かれ、「殺人の追憶」ほど手放しで絶賛という訳ではないが、見応えは充分。
韓国サスペンスに外れナシ!