「彼の不在」プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命 Hanaさんの映画レビュー(感想・評価)
彼の不在
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ブルーバレンタインで脚光を浴びたデレク・フランシアンス監督作。本作は3部構成をとっており、犯罪モノ、警察汚職モノ、メロドラマと変わっていく。構成上派手かつ最も目を引くのは1幕目である。
この映画のちょっと変わった所としてはフランシアンス監督の神経質なカメラワークと異常にテンポがいいことだろう。登場人物たちを延々とカメラが追って行き決して枠の外へは逃さない。それに加えて音楽が終始食いぎみに流れてくる。
つまり音楽によって導かれ、カメラによって逃がさない。運命や宿命といったものを映像と音楽によって見事に表現している。
1幕目が終わり、2幕目、3幕目と進むにつれて何かが足りない感じがしてくる。それはルークがいないこと。圧倒的に魅力的なキャラクターの上にシーンも派手、そのせいで2幕目以降が物語的にも映画的にも喪失感に襲われてしまう。意図的なのだとすればこれは非常に上手いうえに計算され尽くされている。
何気ない日常のもの、食べ物であったり乗り物、お金の金額などがいやらしくなく3幕をゆるやかに繋いでおり効果的に使われており、見返すと新たな発見もあってこちらも計算されている。
ある悲劇を通して運命へと飲み込まれていく登場人物がほとんどのなか、ルークの息子であるジェイソンだけは積極的に自由を目指していく。その自由とは逃げることではなく、運命の中心へと近づくことであり、そしてその核心を知ったときこの映画で初めて登場人物が自らの意思でカメラのフレームの外へと出ていく。松の木の向こう、悲しみの先へと目指してゆっくりと消えていく。
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