「全体巧くまとまっている楽しめる近未来ドラマだね」プラチナデータ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
全体巧くまとまっている楽しめる近未来ドラマだね
東野圭吾原作の映画化作品は、以前何本か観たが、自分は彼のこれまでの映画化作品とは、相性が良く無かったので、本作も未だ敬遠していた。
しかし、映画関係の仕事をしている友人から、是非この映画を観るようにと勧められた。
そこで、意を決して(少々大袈裟な表現だ)映画館へと足を運んで観たらこれが良かった!
同じ日に「図書館戦争」を先に観たのだが、この2作は共にベストセラー作品の映画化であるが、本作は、テーマもしっかりとしていて解り易いし、映画として映像的にも非常に面白く原作のテイストを再現する事が可能な上に、サスペンス映画として充分に楽しめる内容の映画だ。
一方「図書館戦争」は実写にして、戦闘シーンをリアルに見せると、本の自由の為に命を張っている人々が滑稽に見えてしまい、リアルを追求すればする程に逆効果で、シラケて観ていられない事態に私は陥った。これは原作の力の違いにも起因していると思うが、その上で、テーマや内容的な問題から、実写向きか、アニメの方がベターかの決定が難しい選択の分かれ道になったと思うのだ。TV同様アニメだったら良かったと思う。
しかし、こちらの「プラチナデータ」は時代的には現在でも、今の日本では現実には未だDNA鑑定の研究や、その開発が小説の世界が描く様な現実に総てなっていない事を考えれば、この作品はある種の近未来小説と言う事になる。
その現実の世界に未だ存在しないフィクションの世界である、未来小説を嘘に見えない様に描いているのがこの「プラチナデータ」だ。
こちらの話は原作がしっかりと練ってあり、不自然なところが見受けられない点で、フィクションでありながら、ノンフィクションの味が出ている分ワクワクと話に引き込まれるのだ。
嘘の世界がリアルっぽく巧く描かれ、話も心理ドラマとして進行して行くために、不自然な矛盾を映像で見せられる事が最小限で抑えられている。
勿論二宮演じる神楽を追う、浅間を初め、警察の刑事達に寄る追跡シーンは、少しばかり?間抜けに見えるし、邦画は低予算である為に、カーチェイスも、車を潰さないと言う事が前提にあるのだろう、この追跡シーンのカメラワークでは面白くない。
日頃ハリウッド映画を見慣れている日本の映画ファンには、長々と続く迫力の無いカーアクション程つまらないものはない。など突っ込み処も多々ある。しかし、容疑者と刑事の間に新たに生まれる友情の繋がりや、親子の心の傷や、葛藤も心理的に引き込まれるテーマであった。最後のDNA=宿命、心で切り開く未来=運命と置き換えられる落とし所も良かった。アイドルの二宮和也の神楽役については、賛否が分かれるが、彼の芝居を抜きにしても良い作品だと思った。二宮ファンには勿論楽しめる作品の筈だ。「ビューティフルマインド」を越えるとは言えないが、しかし邦画で此処まで巧く出来れば最高だと思う。