「もう一つの「プラチナデータ」」プラチナデータ BBさんの映画レビュー(感想・評価)
もう一つの「プラチナデータ」
映画を見てから,話的にすっきりしなかったので,原作を読んだ。似てはいるが,結末とか逃亡のエピソードとか,何より「スズラン」の存在,水上教授の性別において,明らかに二つは違う。個人的には,原作が好きだ。スズランと神楽とのエピソードを省略してほしくなかった。そこで,本当の意味で神楽の心が変化し,リュウと神楽が最終的に一体化できたのだ。だから,映画では,何だか神楽が浮いている。まったくサキとの心の接点をもてないからである。映画の終わり方では,神楽が救われない。原作のように,リュウが最後に消える前に,花嫁姿のスズランを描かせたり,研究所を去った後,神楽が父親と同じように陶芸を志したり,友達のように浅間とメールし合ったり・・・というような微笑ましいエピソードを入れることで,さらに物語に深みが出たと思う。東野作品は,ミステリーでありながら,人と人とのふれあいやつながりを大切にする温かさが節々に感じられるのも,魅力の一つである。それを映画でも,ぜひ表現してほしかった。主演の二宮なら,誰よりも自然にそれを表現できたはずである。
いろいろ演出,脚本に意見してみたものの,最後にリュウとサキの幸せそうに顔を寄せ合う場面では,不覚にも涙が出た。二宮のリュウは絶品だった。リュウの持つ純粋さ,優しさ,透明感,そして,壊れそうなほどの繊細さは,二宮にしか出せかったであろう。「変身!」とならずに,ここまで自然に人格を変化させるあたりもお見事!申し訳ないが,ストーリーに感動したのではない。リュウとサキが,この上なくせつなかったのだ。
だから,願わくば,原作通りのシナリオ(連続物のTVドラマでも構わない)で,もう一つの「プラチナデータ」が見てみたい。やはりニノ&トヨエツで。きっと,傑作と呼ばれるものになるに違いない。