劇場公開日 2012年9月28日

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「つくづく、男って…」エージェント・マロリー cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5つくづく、男って…

2012年9月30日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

興奮

はっきり言って、大作ではない。二本立てなら、ラスト一本割引されないほう。朝一番に掛からないほう。レコードで言えば、B面。でも、出会うとほくほくと得した気分になること受け合い。「小気味良さ」とはこういうこと、と鮮やかに魅せてくれる93分だ。
原題『Hayware』は、1.干し草を束ねる針金、2.興奮、混乱、狂乱。あの邦画以上に「ひっちゃかめっちゃか」に展開する。雇われスパイ稼業から足抜けするマロリーに仕掛けられる、幾重もの罠。『トラフィック』『コンテイジョン』同様、舞台ごとにグレー、ブルー、イエロー…と色調が変わり、マロリーの活躍も八面六臂だ。逃げ、攻め、潜み、仕掛ける。
一方、対する男たちは概して精彩を欠く。主役級の俳優がズラリと揃っているのに、マロリー一人にかなわない。まあ、それでよいのだ。新しい恋人も、かつての恋人も、「なぜこんな男に、あのマロリーが?」と首をかしげたくなるが、そこは突っ込んではいけない。所詮は、マロリーの引き立て役なのだから。「絶対領域」の父親は別格として、唯一キラリと光るのは、ダイナーに居合わせたばかりに巻き込まれ、マロリーの逃避行に同行するはめになるメガネのにーちゃん。肩肘張らずカッコつけず、ひたすら慌てふためいているところがかえっていい。誠実ささえ感じさせる。続編を作るなら、ぜひ再登場願いたいところだ。世の中の男性諸氏も、半端なやせ我慢や背伸びより、全力で慌てふためくほうが好感が得られるらしい、と記憶にとどめておくとよいと思う。
ダメッぷりを競い合う悪役男優陣の中で、頭ひとつ出ていたのは、今が旬のマイケル・ファスビンダー。『プロメテウス』でのアンドロイド同様、どこか得体が知れず、おまぬけなのか切れ者なのか、と観る者の予想の振り子を大きく揺り動かし、楽しませてくれる。『ジェーン・エア』も彼あっての作品だった。今後にますます期待が掛かる。
それにしても、それにしても。マロリーの前にガチッと立ちはだかる、骨のある男はいないのか? しばし頭をめぐらし…思い付きました! 「ノー・ワイヤー、ノーCG、ノー・スタント」のないない尽くし、タイが誇るトニー・ジャー! 肉弾戦向きな彼ならぴったりです。さらには、『チョコレート・ファイター』の無敵少女も絡めば、面白さ倍増かもしれません。ぜひ続編は、アジアで熱い戦いを! かなり本気に期待します。

cma