劇場公開日 2012年5月26日

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「アルモドバル版「ブラック・ジャック」の悲劇」私が、生きる肌 梅薫庵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0アルモドバル版「ブラック・ジャック」の悲劇

2012年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

興奮

予告編だけ観ると、
かなりエロティックな印象を与えるが
本編では、その印象はかなり違った
それは、おそらくアルモドバルの色彩感覚によるもの

同じ物語を、カナダのクローネンバーグ
(戦慄の絆)や
ニューヨークのデ・パルマ
(悪魔のシスター)が撮ったら
かなり陰気な演出になったに違いない

小道具やセットの組み立て方、使い方も秀逸
顔の描かれていない裸婦像、
針金で縛り上げ形づくる盆栽
わらで作られたマネキン
ピーピング(覗き)をイメージさせる
幾つものモニター

具体的にエロスを描き出す場面は少ないものの
こういった幾つものディテールを繋ぎあわせて
観るものの頭の中に印象を作り上げるのは凄い

ストーリーと登場人物

これはもう手塚治虫の世界だろう
この映画の筋と似たようなエピソードは
「ブラック・ジャック」のなかにはいくつもある
(すくなくとも片手の指の本数ぐらいは見つかる)
各登場人物の風貌も、どことなく手塚の描く
キャラに似てなくもない

もしかしたらこの映画
アルモドバル版の「ブラック・ジャック」
なのだろうか

それも悲劇の。

梅薫庵