劇場公開日 2012年9月1日

I'M FLASH! : インタビュー

2012年8月29日更新
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藤原竜也&松田龍平、初共演の豊田組で見出した新たな自分

生きることへの希望と絶望。日常に潜む心の闇を、過激な映像で表現し続けてきた豊田利晃監督。そんな豊田監督は、「ナイン・ソウルズ」でタッグを組んだ故原田芳雄さんの葬儀をきっかけに、「I'M FLASH!」を製作した。豊田作品への参加を熱望してきた藤原竜也をはじめ、松田龍平ら豊田組おなじみのキャストが顔をそろえ、生と死の駆け引きを鮮やかに形にしている。孤独が渦巻く濃厚な作品で、初共演を果たした藤原と松田は、互いのなかに何を見たのだろうか。(取材・文/編集部 写真/キム・アルム)

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新興宗教団体の教祖ルイは、端正なルックスと「死がすべて救いである」という教えを説き、カリスマ的人気を獲得している。しかし、ある事件をきっかけに生と死を目の当たりにし、生のまばゆさにとらわれていく。対する新野風は、物語の引き金を引く存在として現れる。

豊田監督いわく、藤原演じるルイは“神”であり、松田扮する新野は“悪魔”だ。死による救済をうたうルイの周りには死があふれているが、本人が死ぬことはない。それに対して、神など心のよりどころを持たない新野は、極めて現実的であり、死を与えることができる唯一の存在である。ふたりはひかれ合いながら、それぞれの命をかけ対じすることになる。ルイと新野という相反するキャラクターは、矛盾しているようでどちらも豊田監督を投影している。

「ルイはいろんな面を持っていて、人間として面白い。はっきりとした孤独を抱え、ひとりで生きている。この作品のなかでの僕のキャラクターは、水中では自己を解放することができるが、陸に上がれば受け入れられない現実が待ち受けている。セリフの一言一言に、豊田監督と近い部分があるキャラクターなんじゃないかなと思いました」(藤原)

「行動から、わかりやすい感情が出る役ではなかった。台本を読む段階ではなく、現場で役に入っていきましたね。ルイとの関係性は、撮影しているなかでわかっていった感じでした。台本を読んだとき、ルイは人間離れしているイメージだったけど、藤原くんの演技を見たら、人間くさくてピュアで、感情が揺さぶられている人だった。だからこそ、ルイの人間らしい部分に影響を受ける新野というキャラクターがイメージできたんです」(松田)

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生死と隣り合わせの役どころは、演者にも強い精神力を要求した。藤原は「監督は、余計なことを考えても、全部そぎ落とす作業をしていたので、ワンカットごとに龍平と対じして撮りあげるという気持ちでした。深いところを考えることを嫌う演出方法だったので、龍平と向き合うことを大事にやっていました」と現場を振り返る。その結果、「松田龍平という人のなかに吸い寄せられるような思い」がわき上がり、「監督の細かい指示はあるけれど、それをクリアして芝居をさせてもらったことで、対照的ないい関係が生まれたなと思ったんです」

殺し屋を演じた松田は、「新野にとって殺しの依頼は日常茶飯事のはずが、今回は仕事を遂行してお金をもらうという、いつものことがうまくいかない。いつもと違う力が働いていることを、認めざるを得なかった。僕自身が、その力とはなんなのかということをずっと探していました」と自らを重ね合わせた。藤原との芝居を通じて、新野とともに力の正体を探究していった。「映画のストーリーやふたりの関係性において重要なことだから、頭で全部決めたなかでやるのではなく、芝居しながら感じることができたのは大きかった。(新野に働いた力を)言葉にするのは難しいけれど、“感覚的”ということかな。新野は神様を信じていないし、感覚に頼る生き方は恐ろしいと思っていたからこそ、自分のなかにつくった決めごとの中でただ生きてきた。でも、間逆の存在に触れて、磁石みたいに吸い寄せられていく」

豊田監督が、自らの周りに漂う“死の連鎖”を断ち切るため描いた「I'M FLASH!」の世界。そんな個人的な思いから発した、ナイーブな死生観にどっぷりつかったふたりだが、生と死についてどのように考えているのだろうか。藤原は「(死は)定めだと受け入れています」ときっぱり。一方の松田は、「そうですね、以前よりは意識をするようになったかもしれませんね」と考え方の変化を語った。

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若手実力派として活躍するふたりは、意外にも今作が初共演となった。現場では男同士のきずなを深めたようで、松田は初日を終えた藤原の様子を語ってくれた。「撮影が終わって飲みに行った席で、藤原くんが空に向かって『上等だよ!』」って叫んでいた。どうしたのか聞いても、『上等精神だよ!』って(笑)」。思わぬエピソードを明かされた藤原は、「何がそうさせたかわからないけれど、そうなった自分に驚きましたね。上等精神で乗り切りましたよ」と笑いながら振り返った。

ふたりは、作品づくりを通して、ルイと新野とは違った形で信頼関係を築いた。過酷な撮影となっただけに「監督が長い道のりを経て、よく完成させてくれたなと思います。これだけのメンバーで、いい作品をつくってくれたという事実がうれしい」(藤原)と感慨もひとしおだ。豊田監督をよく知る松田は、「作品としてエンタテインメントをつくろうっていう豊田さんなりの挑戦が感じられたから、役をやるなかで手伝えたらいいなと思った。台本がすごくシンプルな話だったからこそ、自分の視界をもう少し広げて見ることを意識していきたかった」とこれまで以上の意気込みで臨んだ。

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藤原から見た豊田監督は、「センスもいいし格好いいですね。映画を見ればわかるように、いろんなことを鋭く考えていて、現場をひっぱってくれる」人物だという。念願の豊田監督とのタッグは、「追い込むというか、斬新な演出をしてくれる監督はあまりいないから、そこに自分が向き合うことができたという発見がありましたね。そういう監督と出会えて面白かった」と新たな一面を発見した。

松田は、9年ぶりとなった豊田組の現場で何を感じたのか。「撮影のなかに変化を求めるということではないかな。自分が日々生活して続けていることを、長い人生のなかで豊田さんと仕事する15日間という時間にぶつけられるかっていうことだと思う。その時間に何かを求めるというよりも、自分が生きてきたことを、その短い時間に持っていけるかという気持ちだった」

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