「世界が私たちを変えないように」トガニ 幼き瞳の告発 arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)
世界が私たちを変えないように
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内容については事前にある程度分かっていたので、かなり覚悟をして鑑賞。
しかし、これが実話であるという事実だけで十分に重いからか、虐待シーンの描写などは思ったよりも抑制されていたと思う。
ただ、聴覚障害を持ち尚且つ家庭環境にも恵まれない子供たちが被害者として選ばれていたことには非常に憤りを感じる。更に許し難いことに、地元で非常に力を持っていた加害者らは、周囲に対しても事件について沈黙を強いた。
兵役中に原作を読み、自ら映画化に動いたというコン・ユがこの事件の目撃者、そして告発する子供たちの後ろ盾となる美術教師を演じているが、彼もまた加害者らに弱味を握られている弱い立場の人間である。
ここでは、傍観者である私たちも、いつ彼と同じような立場に立たされるか分からない。
世界のあらゆる場所にこのような強者と弱者の構図は存在する。
誰にとっても目を背けたくなるような現実である。
しかし、見ないふりをすれば、私たちは世界に変えられてしまう。
私たちは世界に変えられないように、現実をしっかり見て、声をあげなければならない。
この作品がきっかけとなり、トガニ法が制定され、13歳未満の子どもや女性に対する虐待について厳罰化された。
それもひとえにこの作品が単に事件を知らしめただけでなく、映画として非常にクオリティの高いものだったからだと思う。
胸が苦しくなるようなストーリーの中で、
似顔絵に喜ぶユリの笑顔、海岸で子ども達がつかの間見せたくつろいだ表情が美しく心に沁みた。
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