「自由・平等・正義 それは単なるお題目でしかなかった!」トガニ 幼き瞳の告発 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)
自由・平等・正義 それは単なるお題目でしかなかった!
私はホラー映画が苦手で普段は観ないようにしている。それともう一つ、韓流映画も事故死や、極端な悲劇ばかり起こるストーリーが多く、おまけに血がドバドバ出る作品が多いので、それから観ない事にしていた。
しかし、GWレンタルDVD屋に行って、単館系映画館で見逃していた作品を探していたら、みんな観た映画ばかりが並んでいた。唯一観ていなかった作品がこの「トガニ」だけだったので、血が噴き出さない事を祈りつつ借りて観た。勿論ストーリーは知らずに借りたのだ。でも、観て正解だった。不快な映画ではあるが同時に良い作品だ。
この作品は、実話が元になっていると言うのに、信じられない程に、グロイ話であったので、先ずその事実が信じられなくて、驚嘆した。
しかし、或る意味、韓国映画として観る限りは、本作の作り方は、珍しく地味と言うか、私が以前韓流に持っていたイメージの様な、観客の感情を逆撫でする様な不快感を伴うシーンの映像は総て、寸止め状態で防いで、必要以上にレイプシーンを連続して長く描く事は無かったので、その事が唯一救いとなり、何とか最後まで映画を見届ける事が出来ました。
障害者学校で、実際に起きていた事件で、こともあろうに学校長による、女子児童に性的虐待を働いていたと言うお話だ。そして、それも複数の生徒が被害に遭い、校長ばかりでは無く、他の男性教師が、男子児童に性的虐待を働いていたと言う信じ難い映画だった。
勿論この事件は映画になる位なのだから、特殊なケースである事を祈るのだが、こんな事実が他にも無いとは限らないと考えると更に、戦慄を憶える。
そして、お隣の国のお話と笑ってはいられない。これは何処の国でも起きてもおかしくは無い事だとも言える気がした。
何故なら、私は普段介護職に従事しているのだが、数十年前、介護ボランティアの人に性的虐待を受けた事があると言うクライアントに出会った事が有るので、やはりこう言う事件は起こり得るものだと確信した。
話は変わるが、30年位前に「リップスティック」と言うヘミングウェイの孫娘さんが主演したレイプ事件を描いたアメリカ映画があった。
やはり、この作品でも加害者が無罪となり、被害者は成す術も無い。その判決に納得出来ない被害者の姉が、被害者である妹に成り代わり、加害者を射殺すると言う映画だった。そこで、映画を観終わった後、少しばかりは、気持ちが救われたのだが、しかし、この「トガニ」は誰も復讐する事も出来ずに、そして現在その学校は閉鎖されているそうだが、事件の捜査の決着は今直未解決だと言う。全く救いの無い絶望的な事件を描いた作品だった。
しかし、よくこの様な恥ずべき事件を映画化したものだと、映画化を決定したその勇気には感心した。現実的には、出来ればこの様な悲惨な事件は隠して置きたいだろう。
この被害者を演じていた3人の子役達の演技が凄く巧かった。そして子供を守り、励まそうと努める新任教師も素晴らしかった。やはり映画は食べず嫌いせずに観るべきだと実感した作品だった。社会派映画が好きな方にはお薦め出来る映画ですね。