パシフィック・リムのレビュー・感想・評価
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遠い子供の頃の記憶をくすぐる巨大ロボット&怪獣映画
★★★★★+(気分はもう特選)
この作品、日本人ならあっと驚き、ついつい嬉しくなること請け合います。何と言っても、冒頭の怪獣と巨大ロボットが戦うシーンをひと目見ただけで、子供の頃から馴染んだあの怪獣特撮作品やロボット漫画だと感じられることでしょう。そんな日本伝統のSFコンテンツの世界そのもののが、ハリウッド映画としてパワーアップしてスクリーンに登場してくれているので、嬉しくなるわけですよ。
アニメ好きなら、自分の好むロボットアニメが、もし実写化したらどんなに凄いことかと夢見たことでしょう。実はギレルモ監督もそのひとりだったのです。子供の頃から日本のアニメや特撮文化をこよなく愛する本物のDEEPなファン。作品に登場するメカのデザインをとっても、マニアの人ならこれはかなりの“通”の人り仕業だと納得できることでしょう。
小うるさい映画ファンからは、なんだこの作品、怪獣と巨大ロボットのぶつかり合いばかりで飽きるなんて、不満を言う人も当然いることでしょう。しかし、そんなお約束ごとはウルトラマンでも一緒なのです。でもね、あの怪獣のノシノシと歩き街を壊していくところ、そしてロボットと怪獣の戦い方は、あくまでも日本流。殴りつける、投げ廻す、締めるなどまるでプロレスのような格闘シーンに加えて、これまたお約束の必殺特殊光線なんかも登場するという、遠い子供の頃の記憶をくすぐる展開なんです。思わず懐かしさがこみ上げ、感涙してしまいました。
そればかりではありません。映画のパンフレットのなかの『親愛なる日本の皆様へ』と題したギレルモ監督の挨拶文や、エンドロールではっきりと本多猪四郎監督(『ゴジラ』)への敬意を明記しているのです。わが国の怪獣映画の伝統に敬意を表する監督の思い、情念にこころ打たれた作品となりました。
ギレルモ監督の日本びいきはキャストにも及び、菊地凛子を主役クラスで抜擢しています。彼女に施されたメーキャップを見ますと監督の好みも分かったような気がしました。ちょっと日本人離れしたオリエンタルな雰囲気なんですね。
もう一つ。本作で登場する巨大生物は「カイジュウ」と命名されているのです。今後「カイジュウ」がスシやゲイシャのように国際語として通用する日が来るのかもしれません。
そんな日本的な巨大ロボット&怪獣映画でも、そこはハリウッド映画。巨額な製作費を投じた映像は、凄まじいスケール感と緻密なディテールに目を見張らせてしまいしました。中でも、ロボットの外観や搭乗員の戦闘服が幾度の戦闘で無数の傷が浮き上がっている質感が生々しかったです。
そんな設定面だけでなく、ダークファンタジーの第一人者として評価を確定しているギレルモ監督は、どんなダークな作品でも泣かせるという必殺技を持っているのです。本作でも、菊地凛子が扮するマコが背負っている少女時代にカイジュウに襲われた恐怖とその場で家族がみんな殺された悲しみのトラウマがキーポイントとなっています。
巨大ロボット・イェーガーの操縦には、搭乗する2名のパイロットが、神経同調システムによって心を一つに共有する必要があるのですが、マコとぺアを組むローリーにとって彼女のトラウマが強すぎて、操縦に支障をきたすほどでした。しかし、自らも兄を戦闘で失った悲しみを背負ってきたローリーは、ペアを組んでいた兄の代わりになるのはマコしかいないと司令官のスタッカーに説得します。実はマコの育ての親がスタッカーだったのです。両親の敵を取ることと、父親であるスタッカーに認められたい一心でマコは、イェーガーの搭乗を諦めきれなかったのです。
そんなマコとローリーが心を通わせていく過程。そしてマコとスタッカーの絆の深さを見せ付けられるシーンでホロリとさせられました。
芦田愛菜が演じる幼いマコが、自分をカイジュウから救ってくれたイェーガーの操縦席から姿を出したスタッカーに、どれほど深い尊敬の思いを持ったのか、とても印象に残るシーンでしたね。
マコという存在は、単にギレルモ監督が日本びいきだというだけでなく、人類が団結して共通の敵に立ち向かっているという象徴だと思います。ただでさえ、シンクロ性が問われるイェーガーの操縦に、性別も国境も肌の色も超えたふたりが合体して挑戦するというのは、なかなかハリウッド映画ではない設定ではないでしょうか。そういう点で、キーマンとなる役柄を菊地凛子は難なくこなしたと思います。これからの活躍が楽しみですね。
多国籍という点では、世界各地のイェーガーにお国柄が設定されていて面白かったです。主役のイェーガーとなる『ジプシー・デンジャー』はアメリカ産で、ガンマン風の出立ち。世界最強の最新イェーガーであるストライカー・エウレカは、オーストラリア産。けんかっ早い国民性を反映して、機動力・瞬発力に特徴があります。怪力自慢なのがロシア産のチェルノ・アルファー。顔つきが山本太郎が喜びそうな原子力発電所風のデザインなんですね。イェーガーでも異色な3本の腕を操るのがクリムソン・タイフーン。中国人のパイロットがお国柄にならではの軽業を披露します。日本製のイェーガー・コヨーテ・タンゴは初期のモデルで、本作では引退していました。スタッカーの愛機で、どことなく風貌が鉄人28号に似ているのです。これらがチームを組んで、個性豊かに戦う姿にはきっとワクワクすることでしょう。
なお、本作終了時のエンドロール途中に、とある人物の消息が分かるユーモラスなワンシーンが挿入されているので、席を立たないで最後までご覧なってください。
予告編負けしていない。
ジャパン・プレミアで見てきました。
この手のCG主体の映画は大抵予告編以上に凄いシーンが無かったりしますが、本作では予告編以上のシーンがたくさんある上に、後半にまとめてということもなく全編に渡ってバトルシーンがあります。
その肝心のバトルシーンですが、巨大ロボットが怪獣相手に、殴る、飛び掛る、撃つ、斬るなど、超絶アクションの連続で物凄い大迫力でした。ここ最近CG演出には見飽きた感もありましたが、久々に驚かされると同時に胸が熱くなりました。特に中盤の香港でのバトルシーンは必見の価値有りです。
ストーリーに関してはベタですが、変にラブストーリーや人間批判に走らないド直球な感じが良かったですね。
唯一というか、最大の欠点は日本製イェーガーがほとんど活躍しないこと、日本の巨大ロボットに敬意を表しているわけですから、ちゃんとした戦闘シーンを見せて欲しかったです。
兎も角、巨大ロボット&怪獣が好きな人もそうでない人も是非とも劇場+3Dでその迫力を体感してください。度肝を抜かれること請け合いですよ。
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