「3Dはこの映画のために」ゼロ・グラビティ 病気の犬さんの映画レビュー(感想・評価)
3Dはこの映画のために
21世紀の傑作。
テーマは簡素でストーリーはないに等しいが、これ以上ないほどの映像表現力。圧倒的な画面構成。ここまで緻密な映像を折り重ねた作品は類をみない。賛辞は尽きないが、以下に考察。
この映画の素晴らしさは奥行きにあると考える。思えば平面のスクリーンにどこまでの奥行きを与えるかが20世紀の後半からの映画の課題であった。
平面上に描かれた絵画から世界の創造へ。例えばジュラシックパークがタイタニックがはたまたブレードランナーが挑んできたこの命題に対する、強力な武器がCGであり3Dでありそれらをもってやっと映画がたどり着いた境地がこの映画である。
宇宙という無限の空間を舞台に巨大で無機質な塊が猛然と襲いかかってくるこの世界の設定こそ回答であり、鍵であった。
この偉大な発見にはただ頭を垂れるのみであり、物語は蛇足でしかない。映像の海に溺れる贅沢さを時間いっぱいに楽しむべき作品。
リアルな宇宙を再現するのが映画の使命ではなくそれっぽさを壮大に描いたものが勝ちである。この思い切り、そして実現力こそを評価したい。
しかし才人とは思っていたがキュアロンが最初に到達したのはポッターですら無駄にしない彼の貪欲さの証左でもある。
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