「GRASP」ゼロ・グラビティ 19joさんの映画レビュー(感想・評価)
GRASP
秀逸。
ライアンが死を覚悟した時に現れたコワルスキーが放った台詞。
「着陸は発射と同じ」
ここでの「着陸」は「死」を、「発射」は「生きる」ことを隠喩しているのだと気付いた瞬間、この映画の観方が180度 SFから哲学映画に変わった。
宇宙空間でライアンは幾度となく極限状態の「死」を体感する。
次々と襲いかかる危機は、まさにサンドラ・ブロックが語る「トンネルの先に光がなさそうな時」である。宇宙は、我々が非常事態の時に感じる孤独感や緊張、恐怖感とも似ている。
そのような死と生が表裏一体の状況でも、必死に生きようと何かにつかまろうとするライアンの姿に、GRAVITYを感じる。
ライアンが生きる為に必死につかんでいたロープからは、自分で自分の命綱を選択して生きろ というメッセージが隠されているようにも感じた。
そしてそれは「諦めることも学べ」と言って、自ら命綱のロープを離したコワルスキーの言動からも。
劇中で印象に残っている映像は、漆黒の宇宙と対比して自転している青々とした地球。
映画の中での地球は生きることの象徴であるし、それを諦めないライアンも「私の瞳はブルーに見えるが実はブラウン」と言っていた。
そしてライアンが映画の最後に、しっかりとブラウンの大地をつかんだところが秀逸。
重力に逆らいながらも生きていく意味。
この映画の素晴らしさは、映像の美しさや技術面だけではない。
強烈な死生観を映像と言葉で訴えかけてくれる。
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