「これ以上はない」ゼロ・グラビティ 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
これ以上はない
今年最後の注目作で、期待が高すぎたのはもちろんなのだが、その期待を軽く突き抜けるほどの大傑作だという予感で見に行ったら、期待値くらいだったかなという印象だった。3D吹き替えで見たら、あんまり飛び出てなかったし、吹替えは作り物感があってリアリティを削いでいたように思う。字幕2Dで見返したい。
後半サンドラ・ブロック一人になってしまうと、それでよく最後まで持ったことが凄いのだが、やはりドラマとしては物足りなさを感じてしまう。多様性や広がりが足りなかった。
それに、彼女は子供を失ってから人生に対するモチベーションが低下していて、そんな状態でありながら命の危険にさらされたら必死で命を守ろうとするという感動がある。しかし、そもそもそのような人生に対するモチベーションの低い人間が宇宙飛行士に選ばれるだろうか。それは映画のドラマ構成に対して後付された感じがぬぐえない。
ちょっと手が外れたらそのまま永遠に宇宙空間を漂い続けなければならないといった宇宙や真空、無重力の怖さが尋常ではなく、そがとてもリアルに描かれていた。改めてファーストガンダムの表現はとてもリアルだったのだなと、この映画を見ていて思った。
(追記)
字幕2D版でもう一度見て来た。こっちの方が断然よかった。3Dがむしろノイズになって、出ているのか出てないのか気になることもあった。字幕の方が主人公の心理をダイレクトに伝え、違和感がなく物語に没入できてスリルを味わう事ができた。
『エクスペンダブルズ』や『パシフィックリム』は吹替えの方がむしろ楽しかったのだが、このようなリアリズムに徹する姿勢の映画には字幕の方が合っていた。このような大傑作を最初に字幕2Dで見なかったせいで印象が悪くなってしまい、非常に恨めしい。
宇宙サバイバルをリアルに描こうとした場合これ以上の結果はもたらされないのではないだろうか。圧倒的だった。
人間の誕生を示唆しているという指摘をいろいろな人がしているけど、もちろんそうなのだろうけど、陳腐だし面白くもない。もっと語るべきこの映画の神髄は他にあるのではないだろうか。