「やはりテレビ放送分と旧劇場版の方が完成されていると再認識したのみ」シン・エヴァンゲリオン劇場版 Fate number.9さんの映画レビュー(感想・評価)
やはりテレビ放送分と旧劇場版の方が完成されていると再認識したのみ
長年のファンとしてやはり完結した事には感謝感激です。
ただ、序、破、Q、と新劇版を見てきましたが、旧作ですべて完成されていると思っている私としては、やはりテレビ放送分と旧劇場版の方が謎の伏線や回収のバランスなども含め、無駄なく完成されていたなと再認識しただけでした。
この新劇版は、やたらごちゃごちゃと新たなキャラや新設定を入れ込んだものの、その多くの新設定が物語の中では説明不足&消化不良で、そこそこ旧作では知識オタだった私ですら解説動画などを見ないとよく分からない内容になっています。
うる星やつら「ビューティフル・ドリーマー」のオマージュ的な街全体が特撮のセットだったりするメタ表現などに至っては、この新劇から入った新規の人(少ないとは思いますが)にとっては意味不明レベルでしょう。結局は「アニメなんか見てないでいい加減現実に戻って大人になれよ」ってテーマ自体は基本的に同じでも、物語としては"語り過ぎ"で逆に説教臭さが強くなっているだけ。
結局、ゲンドウはシンジと精神世界でありきたりな親子対話を果たしたところで、ゲンドウは勝手に自分語りに納得して、あっさり計画を断念して途中下車(笑)。人間やめてまでやってきた計画を今さら止めるの?こんな自己啓発セミナー程度の内面語りで満足しちゃうくらいの人間関係の悩みでウジウジし過ぎでしょ、庵野監督。
また、肝心のシンジの復活がご都合主義。まだレイの成長はほっこりしてて良かったが、シンジは終始いじけてただけ。もっとレイと一緒に第三村のみんなと生活を共にして、他者との関わりの大切さや日常を生きていく事の意味を考えさせ、少しづつ自立していく過程を描くべきだった。それなのに周囲の人間が甘やかしているだけだから、シンジがニアサードの責任やレイの死を受け入れて立ち直る「精神的成長」が唐突で説得力が感じられなくなっています。
また今作ではマリが完全にシンジのお母さん的役割を担わされており、やはり旧作にいなかったキャラでありながら、そこまで重要なキャラとして描かれる事に対して最後まで違和感は拭えませんでした。
まあ、とは言え、ちゃんと庵野監督が作品として決着を付けてくれた事にはファンとして感謝しています。あとはそのうち「空白の14年間」を外伝的な作品として見せてくれたら嬉しいです。