「庵野さんの手のひらの上」シン・エヴァンゲリオン劇場版 曲則全さんの映画レビュー(感想・評価)
庵野さんの手のひらの上
傑作です。ただし(いつものとおり)一見様お断り。
自分としてエヴァは序・破・Qで見限っていたのですが、
NHK「仕事の流儀」庵野特集で、
・父親が事故で片足をなくし、ずっと世界を恨んでいた
・TVエヴァ終了後のファンからの殺人予告等で、自殺を考えた
・立ち直ったのは周囲の映画仲間や関係者、特に
何より、妻「安野モヨコ」が彼を支えた
・今回の一作で、決着をつける
という姿を見て、劇場に足を運んだ次第です。
こうした前情報があったせいか、徐々にシンジと庵野さんが
オーバーラップしていき、
「どうしてみんな、僕を放っておいてくれないんだ」
「それは、みんなあなたを愛しているから」のセリフや
今までどちらかというとサブキャラだったマリの唐突な
「何処にいても必ず迎えに行くから」のセリフに、
シンジ=庵野、 マリ=モヨコ、 同級生=映画仲間 という
構図があると気づいた次第です。
そうなると、後半にエヴァンゲリオンの映画製作風景が出てくるのは
映画と現実が侵犯しあっているということで納得。
となるとアスカは妹(実際に庵野さんには妹が実在)ということか?
ということでこの映画は、シンジの成長物語? 庵野さんの再生物語?
そしてNHKで庵野さんが語っていた「アングルと編集がすべて。内容は二の次」という
言葉から、結局自分の好きな絵をつくりたかっただけ?というすべてを多義的に
含んだ、実に奥行のある映画となったと思います。
さらに言うならば、庵野さんは、何故「仕事の流儀」に出演することを了解されたのか?
と聞かれた時に、「映画の為(番宣)」とちゃっかり答えておられました。
その手に引っかかって、見に行ったわけですが・・・
つまり全ては庵野さんの手のひらの上ということか。
それはそれでいいんです。
最後のホームの場面で、マリの手を引っ張って階段を
駆け上っていくシンジの姿を1日たった今もじんわりと思い返しています。
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