「全てが花びらの様にひらひらと散り、止まっていた時が動き出す。」シン・エヴァンゲリオン劇場版 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
全てが花びらの様にひらひらと散り、止まっていた時が動き出す。
冒頭のシークエンスは既に色々と露出していて、二度見ながらも映画館のスクリーンと音響でより没入感に浸りながら鑑賞。
映画館はやはり良い。
破で既存のエヴァンゲリオンをメッタメタに切り裂いてそこから突き進んでの前作はもう8年前。
4部作中3部作使い物にならないゴミクズの様な主人公の落とし所はテレビ版よりもそう高くなることは無かろう。
そう思い続けていた。
相変わらずシンジは動かないし、周りが何をやっても動かない。
しかし、時が止まる彼らと違い周りは過去を受け入れて前に進んでいく。
2時間半と言う尺はこの広げ過ぎた風呂敷を回収するのは無理じゃないか?
そう言う疑問を裏腹に、一人一人の魂が浄化されていく。
とても丁寧に描かれて、さながら散りゆく花びらの様。
生命の種子達もタンポポの綿毛の様に宇宙を舞う。
20年前にテレビ版を観ていた頃は、世界を拒絶していく作風が肌に合わず、その後も拒絶反応しかなかったのに、今作が先に進むにつれ、シンジは立ち上がり、全てをあるべき場所に戻していく。
もう涙が止まらないわけですよ。
はるか昔の遠い宇宙で繰り広げられた親子喧嘩同様に、父との対立、そして和解。
今作はポジティブな言葉に溢れていて、ふんわりと温かい。
壮絶な筈の決死のダイヴも、あの人の救出も、あの人との砂浜での再会も全てが温かく、そして優しい。
最後、ようやく止まっていた時が動き出し、監督の生まれ故郷、山口県宇部市の駅の風景で終わる。
時は動き出した。
僕らも前へ進もう。
2020年と21年と言う、歴史の狭間から抜け出すのに優しく肩を押してくれる映画でした。
P.S.
エヴァシリーズを毛嫌いしていたのが、シンジの親子関係にあった事も大きいです。
僕もずっと厳格な父親と対立していたのですが、それはまさにゲンドウと瓜二つだったから。
久々に手紙でも書いてみようと思います。
13年ぶりに。