「パイ青年のサバイバル冒険物語」ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日 ハルクマールさんの映画レビュー(感想・評価)
パイ青年のサバイバル冒険物語
なのかと思いきや!
インドのポンディシエリにある動物園に住む少年パイは、家族の事情で動物を売りカナダに移住することになる。売り物の動物たちとともに日本の貨物船で移動をしていると、ある日大嵐に見舞われ、家族と離れ離れとなりながらも一人救命ボートで脱出する。
嵐が過ぎ去り、救命ボートを見回すと傷ついたシマウマが倒れていて、オランウータンが大量のバナナの房をいかだ代わりに救命ボートまでたどり着く。すると、ボートの幌の中からハイエナが現れ、傷ついたシマウマを襲い始める…。
ここまで、トラはまだ自宅の動物園パートでしか出てこない。まあもちろん最終的に救命ボートにはトラとパイが残り、猛獣ゆえの油断したら食われる恐怖と戦いつつも、なんとかトラも自分も生き残れるように奮闘していく。
だけどいかんせん大海原の上、まずもって飲めるの?食べれるの?問題を解決しなければいけなくて、あの手この手で食料を確保するんだけど、魚にごめん!って謝っていたり、いちいちインドらしい。
そういえば、貨物船のシーンでお母さんがベジで、と言ってもそもそもベジ食など貨物船にあるはずもなく、コックと衝突するシーンがあったけど、これ南インド人あるあるで、めちゃくちゃベジタリアンが多い。まあ宗教上牛ダメ豚ダメでお肉はチキンかマトンだけって地域なので、お肉食べなくても全然OKらしい。なので、インド人が海外に行くとまず食事の面で大変苦労します。更にインドに行って食事する外国人も大変苦労します。
どーでもいいインド豆知識でした。
作品の流れは非常にゆったりしていて、時に記憶が若干飛んでしまうぐらいフワーってなる音楽と映像が流れてくる。特に夜のシーンはどれも美しい…が故に目をゆっくり閉じて、おっとっと、となる。
何しろ227日も漂流しているけど、そんなに毎日イベントがあるわけもなし、やっぱりここの退屈さをやり過ごせるかどうかが大変重要。
パイとトラの関係もそんなにガッツリと硬い友情で結ばれるわけもなく、そりゃ普通に獣と人間ですからね、なんとか共存できる、という感じ。このあたりにバディ感を感じる演出を期待されるとちょっと肩透かしかも。
と、ここまでは物語の90%ぐらいのレビューなんだけど、この物語せっかく見始めたなら絶対に最後まで観て欲しい。最後まで観たか観ないかで全く印象が変わってくる。
何故最初に宗教の話を長めに持ってきたか、ヒンディってどんな宗教なのか、いろいろな要素を頭の中に留めつつ、ラストシーンまで辿り着けた時に、今まで観てきた映像が全て違ったものに観えてくる。
そこの凄さに+0.5、でも全体的には静かな映画でした。