「観客は蚊帳の外」サカサマのパテマ ススギさんの映画レビュー(感想・評価)
観客は蚊帳の外
消化不良。この言葉につきる。
監督の過去作品ペイルコクーンを思い出しながら、そっちのほうがよかったなあと溜息してしまった。
退廃的な文明、閉じられた世界から出たいと願う主人公。憧れていた外の世界からきたアイテムによって、その思いは強くなる。いよいよ世界に出てみると、観客にはどんでん返しが待っている。
つくりはだいたいそんな感じで一緒なのに、パテマよりコクーンのほうが、トリックの面白みがあった。
キャラクターを通じて映画の世界を見ていきたかったが、観客はあくまで第三者として思考を巡らせなくてはいけなかった。味方は誰で、追っ手はどんなやつで、どこに帰らなくちゃいけなくて、と普通の映画なら考えなくていいことを、地面があちこちすることも合わせて考えなくてはいけなかった。それ以外の、この世界ってどうなってるんだとか背景や裏を考えながら映画を楽しみたかった。
たとえばパテマとエイジが逃げたときにたどり着いた発電所(?)。エイジが「空の上は罪人の行き着くところとか言って、ただの発電所じゃねえか」など一言説明を言ってくれるだけで、観客は状況の推理に気を取られなくて済んだ。わりと王道をいく映画だからこそ、そういう観客への配慮も大事にして欲しかった。鬼ごっこが終わったなら、まずは安全確保と状況整理を。
監督の過去作品イヴの時間でのラスト、マサキがテックスの行動を推理するシーンは見ていてとても気持ちよかった。状況を理解し、キャラクターが行動する。そのスピード感が、今回感じられなかった。感情移入ができなかった。
エイジは社会に抵抗しながら、空に憧れて、それでどうしたかったんだろう。
俯瞰して自分たちの世界を見られればよかったのか。父親の夢を自分が代わりに叶えたかったのか。世界の真実を知りたかったのか。
他にも、じいさんが最後にもってたメールの内容や、アイガに捕らえられた人物の生死、わからないことが多い。
メディアミックスで語るつもりで映画に謎を残すのは戦略としてありかもしれないが、一つの作品として完結できない技量不足に見えてしまう。
かなり期待してたいたのでとても残念。