劇場公開日 2012年12月1日

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「人の不幸は蜜の味?恋に狂うこの大騒ぎは,何一つ意味が無いから面白い!」恋のロンドン狂騒曲 Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0人の不幸は蜜の味?恋に狂うこの大騒ぎは,何一つ意味が無いから面白い!

2013年2月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

楽しい

映画好きの私にとって神様的存在として最も敬愛す人と言えば、チャールズ・チャップリンだが、彼は自作の作品の監督、脚本、音楽と一人で何役もの仕事を一手に引き受けて、やってのけてしまうスーパースペシャルマルチ作家と言うところだが、ウディ・アレンは何処となく彼に似ていると言ったら、チャーリーのファンに怒鳴られてしまいそうだが、何故か急に類似点だけが、私の脳裏を掠めたのだ。
小男で、容姿のパッとしない点をも含めてだが、映画の脚本と演出の才能は抜群で、しかもコメディーアンであり、ウイット溢れる表現で観客を笑わせたと思うや否や、次の瞬間には、辛辣なセリフを浴びせて来る、彼のそんなスタンスを考えると不意にチャップリンの印象と重なり合うものを感じた。
先日「映画と恋とウディ・アレン」を観た後で、彼のこれまでの作品について想いを巡らせているとついつい、そんな気持ちが心の中に広がったのだ。
ウッディは心理学を勉強していたので、人間の本質的な行動学などを良く熟知しているのか、はたまた、更に多くの女優との交際を重ねた過去の体験の数々が、彼の多くの作品に大いなる力となって表れているのだろうか?その才能が何処から生れたのかは知らないが、数々の傑作の執筆をしていると言う点でも、やはり彼はチャップリン同様、数少ない良識ある作家の一人としてその名を映画史に残す映画監督の一人であると私は思うのだが、そんな彼が、「映画と恋とウディ・アレン」の最後に、「こんなにも運が良かったのに、人生の落伍者の気分なのは何故か?」と言うシーンがあったが、映画作家を始めとするアーティストと呼ばれる人々は、誠心誠意自己の想いの総てを懸けて作品を制作しても、批評家を始めとして、彼のファンでさえも必ず出来上がった新作をまた好評価するとは限らない。その事を良く知る彼なればこそ、本作品では4組の恋の空騒ぎぶりを滑稽且つ皮肉たっぷりに、人の弱気なバカで、大人げなく、愚かしい恋に惑う人々の姿を容赦なく映し出して行く。シェークスピアの「マクベス」の弱気な王様の滑稽な生き方を恋に悩むこの4組に重ね合わせていると言う。なるほど、なるほど彼本来のちょっとした皮肉っぽい描き方がどのキャラクターにも反映しているのだ。映画を観ている私達観客なら、きっと自分はあんな下手な恋は絶対にしないと想わせるところがまた、ニクイのだ。絶対自分には起こり得ない、有り得ない話と見せて置きながら、平凡な一般的庶民のみんなが、直ぐにでもハマってしまう落とし穴を、この恋のモデルケースとして披露する。まさに「恋のロンドン狂騒曲」と言う邦題もぴったりだ。突然離婚を申し立て、若い娼婦と再婚する父アルフィをアンソニーホプキンスが熱演し、元妻でインチキ霊媒氏に狂うヘレナをジェマ・ジョーンズが怪演し、娘サリーをナオミ・ワッツが自然に演じている。この映画の演出をしている部分がこの作品の予告編と一緒にセット・ビジット映像として観る事が出来るのだが、これは、「映画と恋とウディ・アレン」からの映像の一部の様だが、こうして丹精込めて作られた作品であっても、やはり賛否の分かれる作品である事に違いは無い。
昨年一般にも好評を得た「ミッドナイト・イン・パリ」を気に入ったファンには、本作はまた後戻りした作品の様で、うけないかも知れないが、私は充分に楽しめる作品だった!

ryuu topiann