「もやもやして最悪の後味」おおかみこどもの雨と雪 だいこんさんの映画レビュー(感想・評価)
もやもやして最悪の後味
正直ガッカリしました。
同監督のサマーウォーズがイマイチだったことと、おおかみ男(旦那)が死ぬだろうな~と予想ができていた事、最後はスッキリ終わらないであろう事などがわかっていた事などからこの映画を観たくなかったのですが、いざ劇場で目的の映画が満員になり、友人に誘われ仕方がなく今作を観る事となりました。
この映画はできれば観たくないというほどハードルが極端に下がった状態で観たこの映画ですが、そのハードルを大きく下回る内容で驚きました。
途中、幸せそうな家族の生活を観ていて「あぁ良いな~」と心温かくなる場面もありましたが、何よりラストスパートからのエンディングの流れで全て吹っ飛びました。
最後、雨が嵐の中母親に黙って山に入っていく場面では「何故一言も断りを入れないのか?」という想いでいっぱいでした。
母親が心配して追いかけてくる事なんて容易に想像できるのに、傷だらけでボロボロで、死ぬ直前まで母親が追い込まれたのにも関わらず、最後遠吠えして終わりって何ですか?
謝る言葉も無いし、苦労して苦労して必死に育ててきた母親の姿を見てきた自分には全く理解できません。
しかも、その遠吠えに納得して笑顔になる母親の心情も訳がわかりません。
1秒前まで泣き叫んでいたのに、遠吠え聞いて良かったねって、ギャグですか??
「良い映画だった」とか「深い内容だった」と賛否分かれるようでしたが、何をどうみてそうなったのかわかりません。
何より、この映画はプロローグで。ここからやっと本編が始まる感じが凄くします。
というよりここからの物語が観たいのに、ここで終わり??といった感じ。
細田監督の作品からいって、おおかみこどもの続編は絶対に無いと思いますから、「ここからはあなたたちの心の中で」という終わり方が気に入りません。
小説でもそうですが、結末を読者任せにする作品は全く良いとは思えません。
結末等をその映画の中で完結させてこその映画監督の腕でしょう。
とにかくスッキリできず、もやもやもやもやしながら帰宅しましたが、まだもやもやが取れません。
正直、「観なければ良かった」とまで思えます。
良かった部分が無いわけではないですが、それ以上にひどい結末にガッカリした作品でした。
時をかける少女は好きですが、サマーウォーズ、おおかみこども共にイマイチで今後の細田監督の作品は多分自分には合わないようなので、避けるようにしたいと思います。
※また、「いやいやラストは良かったよ!」とか、あの最後は「~~の感じが逆に良かったんだよ」などのコメントがあれば是非お願いします。
もやもやして歯切れが悪いので、私の気持ちをスッキリさせるコメントがあれば助かります。
ラストについてのみ書かせていただきます。
主様のここから始まるというのはある意味あっていると思います。
だれの人生もこれからもまだまだ続いていきますし、子供たちが直面する悩みや選択も。
映画はその初めての大きな節目を切り取ってラストとしているのだと思います。
後半生き方をめぐって雨と雪が大喧嘩をします。
あれはもう子供の頃のじゃれるようなけんかとは違うものです。
花の母親業もただ食事を与えて養育するということとは違ってきました。
思春期という大きな成長の節目に入った子供たち。
誰もが直面する自分の人生へ歩みだす、その記念すべき一歩。
映画は祝福とエールをこめて暖かく子供たちを送り出します。
花は息子への愛着を超えて、人間よりも一足早い親離れを受け入れ、悲しみを笑顔に変えて雨を送り出します。
いつかは必ずやってくる親離れ子離れを若おおかみとなった雨のきっぱりとした態度と覚悟を決めて受け入れる花の強い態度で、感動的に表現してくれました。
雨は出て行く時に母親に何も言いません。
母親の意見や許しをもはや必要としていないということなのだと思います。
雪も豪雨の中、母親を求めることよりは、級友との交流を大切にしています。
それは親としては寂しい反面、とても嬉しく誇らしい事でもあるんです。
子供の自立は子育ての大きな目的なのですから。
花の子育てのドラマはあれで完結しているのですよ。
無事を知る遠くから聞こえる雨の遠吠えと、寄宿舎に行った雪からの手紙。
子育ての一括りを終えた花にとって十分なエピローグのシーンでした。
そしてそれは親として幸せな事なのです。
今まさに中学生の娘の親である私はそう思いました。