「【リーマンブラザーズをモデルとした、リーマンショックを引き起こした大手投資銀行が経営破綻を来すまでの一日を銀行幹部、社員たちの姿を通して描いた社会派映画。】」マージン・コール NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【リーマンブラザーズをモデルとした、リーマンショックを引き起こした大手投資銀行が経営破綻を来すまでの一日を銀行幹部、社員たちの姿を通して描いた社会派映画。】
■2008年のある日突然、ニューヨークにある投資銀行が社員の8割を解雇する。だが、リストラされたリスク管理部門の責任者エリック(スタンリー・トゥッチ)が部下のピーター(ザカリー・クイント)に“用心しろ”と残したUSBメモリーのデータから、同社がMBS(危うい不動産担保証券:サブプライム商品)を多数保持していた事により甚大な損失を出すことが判明する。
会社の経営陣は、金融市場が開く翌朝までに対処しようと一晩中奔走する。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・冒頭の大量解雇シーン。ご存じのようにアメリカの雇用契約は基本的に”At-Will"(随意契約)であるので、簡単に首を切れるのである。日本の解雇の際には30日前通告が必要であるが・・。故に近年であれば、イーロン・マスクがXで何千人にも解雇通知を出せたりするのである。怖い社会である。
・今作を観ると、リスク管理部門が数カ月前から危機を伝えていたのに、それに気付かなかった、CEOジョン・トゥルド(ジェレミー・アイアンズ)などは、真っ先に責任を追及されるべきだが、経験豊富で狡猾なトゥルドは、ジャレッド(サイモン・ベイカー)を通じ、更なる解雇と、MBSを翌日市場が開いたらすぐに売り抜くように指示を出すのである。
因みに、この映画では、重要ポストの人間の年収が良く語られるが凄い額である。額に汗して働いていないのに、貰い過ぎじゃないかな・・。
・高学歴の社員でもあるピーターは、トイレで泣いている。”こんなはずじゃなかったのに。”と呟き乍ら。
だが、私から言わせれば・・<以下、自粛>
■今作の象徴的なシーンは、危機が分かった翌朝に、CEOジョン・トゥルドがウォール街のビル群を眼下にしながら、朝食を摂るシーンであろう。そこに呼ばれた苦悩しながら部下にMBSを売り抜けと指示した責任者のサム・ロジャース(ケヴィン・スペイシー)に、”君は生き残った。”というシーンである。サムは一時は会社を辞めると言うが、その意思を翻意する。彼には、会社自体が破綻する事が見えていたのであろう。
そして、ラストで彼が夜に”自宅”の庭を掘り起こすシーン。その家はもう彼のものではないのだ・・。
<何とも言えない重い映画である。
この映画の元になった会社が惹き起こした事で、日本を含め全世界でリーマンショックが起こり、大変な思いをした事を想い出す。
リーマンショックを過去の遺物と捉えている人も多いが私はそうは思わない。リーマンショックはその後、数年間にわたる就職氷河期を生み出し、現在40代前後の方々の多数の非正規雇用者を生み出し、日本の終身雇用という雇用スタイルを変えてしまったのであるから・・。政府の対応も遅かったしなあ。(近年、漸く対象世代に対する支援策を打ち出している。遅いんだよ、全くもう!)
尚、私も含めて”リーマンショック”を分かり易く描いた映画を観たい方は金融映画の逸品「マネー・ショート 華麗なる大逆転」がお勧めである事を最後に記す。>