「山下敦弘監督らしい作品」苦役列車 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
山下敦弘監督らしい作品
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父親が性犯罪者として捕まったため一家離散となった北町(森山)。稼いだ金も家賃より先に酒と風俗で消えてしまう自堕落な生活だったが、唯一の趣味は読書!ぼろアパートの家賃さえ払えずにいたが、日雇いの仕事も順調にいっても友達になった日下部(高良)におごったり、風俗に行ったりとだらしなさは相変わらず。そんな北町も古本屋でバイトする桜井康子(前田)に興味を持っていた。そして日下部が気をきかせて「友達になる」ことを取り付けたのだ。
途中までは貧乏ながらの青春ストーリーなのだが、滞納した家賃を日下部に借りたり、日下部に彼女が出来て気まずくなったりと緩やかに展開する。そんな3人の友情の他に、同僚のおじさん高橋(マキタスポーツ)が重要な位置を占める。貝を採ったりして上司に怒られてるシーンも面白いが、歌手になることを夢見ていた過去があり、「夢を持ったほうがいい」と彼ら二人に説教していたのに、現場で大けがをしてからは「夢なんて持つな」と変化するところがいい。
性欲いっぱいの北町だったから、のぞき部屋でのかつての彼女との再会も泥沼化。そして「友達」であるはずの桜井に無理やりキス、頭突きの応酬により破局。3年後ボロボロになっていた彼がテレビを見ていると、なんとあの高橋がバンドコンテストで頑張ってる姿を・・・
終盤では砂浜の落とし穴に落ちて、元住んでいたぼろアパートのごみ置き場に落ちるというシュールな展開。そして一心不乱に物書きへの道を進む・・・この展開がなければどうしようもない物語。原作者はこの作品で芥川賞を受賞した西村賢太。私小説がメインだということなので、実際に経験したものなのだろう。
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