「ゲイリー・オールドマンがむちゃくちゃカッコいい」裏切りのサーカス えすけんさんの映画レビュー(感想・評価)
ゲイリー・オールドマンがむちゃくちゃカッコいい
東西冷戦下、ソ連との情報戦を繰り広げてきた英国諜報部、通称"サーカス"の幹部連の誰かに二重スパイの可能性があるとして、かつて、ある失態を理由に解雇された、元サーカスのトップスパイがその疑惑を解き明かしていく。
スパイという職業の虚無性は想像を絶する。もはや孤独という領域を超えて無に近い。一方で、この上なく不確かな存在と気付いていながら、そこに魅了され、思考と行動を抑えきれない性。
ハリウッド的なスパイとは一線を画し、非常に静的にミステリーが解き明かされていく。登場人物それぞれの歯噛みするようなドラマが盛り込まれて、多層的で重厚なヒューマンストーリーに仕上がっている。
ゲイリー・オールドマンがむちゃくちゃカッコいい。英国紳士然とした佇まいにスパイの虚無性を内包する眼差しと沈黙。何よりも声のトーンと抑揚が科白ひとつひとつを詩に昇華させる。
画面の設えも生々しく常に緊張感を伴う。登場人物が多く、映画全体の世界観を重視するため説明的要素をがっつり端折っているので、理解には若干苦労するが、上質なミステリーに仕上がっている。
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