「看過できない二つの欠点。」終の信託 bashibaさんの映画レビュー(感想・評価)
看過できない二つの欠点。
終末医療に関する一考察です。それ相応に重たい内容です。気分が滅入っているときには、ご覧にならない方がよいかと思います。本編は大まかに言って、二つの部分に分かれます。前半は臨床的見地からの終末医療を描いています。患者に扮した役所広司と医師の草刈民代の生々しい医療現場を描き出していきますが、気分が悪くなってしまうような描写も少々あります。後半は法医学的見地からの終末医療を描いています。ここに登場する大沢たかおがまさに独善的な検事を演じているのですが、この検事の人物造型に問題があるのです。(ここで星が一つ減る)まず、結論ありきで訊問していくこの検事はあまりに類型的に過ぎ、その人物造型の浅薄さに私は唖然としてしました。人間的な逡巡や躊躇など皆無なのです。まさに絵にかいたような極悪検事です。私は幸い、検察庁で取り調べを受けたことはないのですが、もし、このような取り調べが日常茶飯事であるなら背筋が寒くなる思いがします。そして、信じられなかったのが最後に字幕のみで語られる後日談です。この映画は虚構であります。事実を基に製作された映画ではありません。その虚構である本編に更に虚構である後日談を付け加えて、一体、どうしたかったのでしょう。後日談が輝きを増すのは本編で語られた内容が事実である場合にのみ限られます。(ここで星が一つ半減る)この後日談は完全な蛇足です。逆説的ですが、この後日談が付け加えられることによって、映画全体が画竜点睛を欠いているように思えます。緻密な映画作りで知られる周防監督ですが、今回はなんとも勿体ないことをしました。
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