「人間一人に語られるドラマがあるように、犬一匹にも語られるドラマがある」ひまわりと子犬の7日間 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
人間一人に語られるドラマがあるように、犬一匹にも語られるドラマがある
シングルファーザーの保健所職員・神崎は、野良の母子犬を保護する。人間に対して敵意剥き出しの母犬の心を開き、里親探しに奔走する…。
宮崎県の保健所であった実話を元にした動物ドラマ。
よくあるベタなワンちゃん映画かなと思ったら、なかなかの好編。
まず、母犬が神崎と出会うまでの経緯が描かれた冒頭。
動物モノに弱い方なら号泣する事必至!
見ていて目頭が熱くなった。
単なる犬と人間のじゃれあい映画じゃないのが本作。
主人公が保健所職員故、その現実問題が描かれるのも大きなポイント。
保護された犬の猶予期間は7日間。里親が見付からぬ場合、殺処分される。
…7日間って一体何だ? 短すぎやしないか?
この舞台となった宮崎県の保健所だけなのかそれは分からないが、たったの一週間で何が出来るというのだ!?
いや、そもそも殺処分されるという現実。
極端な話、犬を人間に置き換えたら、どんなに恐ろしい話だろう。
無論、そうさぜるを得ない理由があるのは分かる。
でも、規則、規則、規則…。
人間の勝手で奪われる尊い命。
人間一人に語られるドラマがあるように、犬一匹にも語られるドラマがある。
主人公・神崎に堺雅人。
理不尽な保健所に倍返し!…は無いけど、母犬と真っ正面から心で向き合う穏やかな好演。
豪華な出演者の中でも、やはり一番の主役は、母犬だろう。
人間に対して敵意剥き出しにする表情、元の飼い主と離れなければならない悲しげな表情、少しずつ神崎に心を開いていく表情…名演!
ワンちゃんが名演を披露する時、いつもそこに名ドッグトレーナー・宮忠臣あり!
監督は平松恵美子。
師匠・山田洋次から良作の心得をしっかり受け継いだようだ。
しかし、苦言が二つ。
母子犬の行方は感動的ではあるが、結局はそういうオチになるんだと少々拍子抜け。実話だから仕方ないか…。
それと、タイトルに偽りあり。この母子犬は7日間じゃ…。