「静かに重く残酷に美しい」少年は残酷な弓を射る manamboさんの映画レビュー(感想・評価)
静かに重く残酷に美しい
映画はトマト祭りの熱狂から始まる。赤は血の色。絆の色。消えない憎しみの色。
緻密に構成され、鮮やかに切り取られた構図と色彩をまとい、母(エヴァ)と息子(ケヴィン)の残酷な物語が進む。映像はエヴァの主観をフィルターして歪んでいる。
ケヴィンが引き起こした破滅を軸に、時間を行きつ戻りつ、エヴァが見た事実をあぶり出す。母になつかない赤ん坊は、育つにつれ母の困惑に喜びと異常な執着を見せる。普通の母親像を演じるエヴァの、息子に対する関心を装う無関心、後悔、恐怖、精神的な服従と現実逃避が、彼女をこの世の地獄へ突き落とす。ケヴィンと向き合うことのなかったエヴァにとって、最後に残された生きる意味は、ケヴィンと対話することだった。ここで彼女は、理解できず受け入れることのなかった「息子」に、初めてひとりの人格として、ケヴィンとして向き合うことになる。
エヴァ役のティルダ・スウィントンが演じた無垢な悪意、ケヴィン役のエズラ・ミラーが表現した母の目にだけ映ったであろう反吐が出るほど不気味で美しい笑顔が頭から離れない。
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