「ゆらぎに過ぎないのか」少年は残酷な弓を射る アメリカナイズさんの映画レビュー(感想・評価)
ゆらぎに過ぎないのか
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物語でエズラミラー演じる少年は物心もつかぬ頃から母親の愛を拒否していた。人が生まれながらにもつ本能すらもたないモンスターのように描かれている。しかしある日体調を崩した彼は自分の弱みを母親に見せてしまう。そしてその時始めて母親に甘え、子供としてのあるべき姿をみせる。その時間はそれまで懐いていた父親を遠ざけるほど極端な逆転であり、そしてこの逆転は数日もするとまるでただの気まぐれだったかのように元の異常な状態へと解消される。
この異常な状態こそ事件を起こし、その後のラストシーンに至るまで、少年の安定した精神状態だったのだろう。
事件から2年たち面会に訪れた母親が少年に「なぜ?」と問いかけるラストシーン。少年は2年前とは考えが違うと告白し、母親の抱擁を受け入れる。この様子は少年にとっての本心をどうしようもなく表しているのだろう。しかし私はそれが束の間見せたゆらぎでないとは確信できない。
面会室を後にするティルダスウィントンの表情は一山を越えた後の安心感と、これからも息子と向き合っていかねばならない言い知れぬ不安感が入り混じっているように感じた。
余談だが、比較内容が近いものとしてガスヴァンサントのエレファントが浮かんだが、今作(少年は残酷な弓を射る)の方が一人一人の人物への感情描写が深く内容に入り込む事ができ、結末から想像が膨らむため、自分好みの作品だった。
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