「偽映画、観たかったなぁ。」アルゴ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
偽映画、観たかったなぁ。
ベンアフがまた面白い作品を作ったとは少し前から評判だったが、
まさか今作だとは思わなかった(ゴメンね)
劇場でチラシを見た時から、これは面白そうだと(映画ファンならば)
けっこう期待していた。
だいたいニセ映画で人質を救おう!なんて、ひとつ間違えばコメディ
になり兼ねないストーリーだというのに、これが実話と言うのだから
凄い、事実は小説より…を地でいくわけだ。
しかし当たり前ながらこのアルゴという作品…まったく知らなかった。
というか、ここまで進んだならキャストを設定して最後まで作って
しまいには、あの過激派たちにも観せてやりたかったくらいだ。
でも絶対、ヒットしなかった気がするけど(事実を知らなければねぇ)
当時、よくニュースでパーレビ国王の名前は流れていた。
カーター大統領といえば、リアル世代である^^;彼が大統領の座を
レーガンに明け渡した原因がこの「イランアメリカ大使館人質事件」の
救出作戦失敗ともいわれているので、歴史背景としても興味がある。
怖い話といえば確かにその通り、イランって国は宗教に纏わる物事を
平和且つ友好的に解決しようという気はサラサラないことが分かるが、
対する米国はどうだろう、イラン人の気持ちを考えたことがあるのかと、
(分かり易く冒頭で説明が入る)平和な日本人からみればアラアラ…と
思うことばかり。業を煮やした国務省が頼み込んだのがCIAっていう、
すぐさま映画の題材になりそうな事件が本当に起きていたのがすごい。
そうはいっても、、、簡単に6人を救出できる状況ではない。
よくやったカナダ大使!と言いたいところだが(まだ早い)、この時点で
彼らの潜伏先が早々に判明してしまう恐れの方が大きかったのだ。
そこで思いついたのが…(いいよね、この人の発想力)ニセ映画製作^^;
素人が聞いたって「いや、それはムリですよね」って尻ごみするところを
「じゃあ他に何かあるのか、言ってみろ!」と言われれば、皆無なのだ。
この期に及んで「なぜ英語教師はダメなんだ?」「自転車ではダメか?」
なんてバカを抜かす官僚どもが多く、どっかの国のアホ連中みたいだ。
時間は迫るし、手立てはないし、こういう時の決断っていうのは案外
荒唐無稽の方が相手の裏をかける(あまりに大胆で)ものかもしれない。
しかし、偽映画製作までの偽プロットが観ていて本当に面白かった。
決して笑える状況ではないのに、あの二人(アランとジョン)がいかにも
なプロデューサーとメイクアーティストの演技で大笑いさせてくれた。
特にメイクのJ・チェンバースは実在の人物で、あの「猿の惑星」により
アカデミー名誉賞をとってしまった有名人。彼の友人だったメンデス
(ベン)は彼とシーゲル(アラン)に一芝居うたせるのだが、自ら率先して
楽しんでしまう二人に、メンデスも面喰う一幕があったほど。
二人の掛け合いに大笑いしているうちに、作戦は佳境に入っていく…。
後半戦、空港での息詰まるやりとりには緊張感MAX!
前夜突然の作戦中止命令により、ここまでの苦労が水の泡、人質達の
運命やいかに…という状況の中、メンデスの強行突破は吉と出るのか。
緊張感高まる中、映画の原画を見せて過激派を喜ばせてみたり^^;と、
大胆な手法で迫るメンデスと人質達。
公開処刑なんて冗談じゃない!絶対に生きて帰るぞ!脱出するぞ!の
心意気が随所に漲るが、旅客機が領空を出るまでの緊張感ときたら!!
もともと飛行機が苦手な自分は、ますます飛ぶのが怖くなってしまった。
エンド前にカーター元大統領の演説と、人質達の映像と写真が流れる。
演じた俳優と並べられた写真がソックリなのに驚く。同一人物か!?
リアル重視の演出に拘るベン、率なく纏めた正統派の地味な作りに
脱帽するものの、是非次回は少しエンタメを取り入れて、楽しい作品を
仕上げてみるのもいいんじゃないかしら。色々な方向性を観てみたい。
(しかしマットもベンもいい俳優人生を歩んでる。踏み外してないもんね)