「ノア 独断の父」ノア 約束の舟 ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
ノア 独断の父
「ノアの箱舟」伝説は有名な話なので、映画化も数多い。
大洪水のシーンとか子供ながらに覚えているもんなぁ…
分かり易い形式で話は進んでいくので、ノアが何でこんな事
になっている(箱舟作り)のかは理解できる。冒頭の流れから
ノアが神の啓示を受けた選ばれし人間、として描かれており
なんだか、とってもいい人のように(失礼)思えるのだ…が!
中盤以降、身勝手もほどほどにしろよ!と言いたくなるほど
ノアの方向性は独断専行状態に陥っていく。
これでは何が正しいのか分からなくなってくるところが怖い。
怖さに加え非常に嫌な雰囲気を醸すのがアロノフスキーっぽい。
動物を助けて子供を殺すだぁ??何言ってやがるこの親父!
この戦慄が止まらない。
聖書の引用からだいぶ脚色されているようで、ノア夫婦には
女の子がいないので、つまり誰かが息子の嫁になって子供を
産まなければ子孫は繁栄しない(今の人類がいなくなる)ので、
養女イラを登場させる。これが美しく成長したE・ワトソン。
この人は顔も美人だけど演技もすこぶる上手い。義母親役の
J・コネリーもこんな感じの女優さんだった。若い頃から品の
良さそうな賢婦ぶりと落ち着きと知性を備えて難なく母親役を
こなしてきた。似ている二人が新旧で並んでいるのが面白い。
ノアはもうR・クロウで大正解。彼なら何でも作っちゃうだろう。
しかし父親がクロウなのに、息子たちの生っ白い現代っ子面!
それを言ったらエマだってキレイ過ぎるんだけど、あの時代
まるでエステしたての顔の人間なんていなかったはずなのに。
あとつば(痰)の吐き方ね。お前らはニューヨーカーか!?と。
過去と現代の入り混じり方が珍妙な分、分かり易いのかしら。
さて、私的にエマとL・ラーマンの共演が何より嬉しかった。
大好きな「ウォールフラワー」のコンビだ。エマは兄の恋人と
いうことで、今回も姉弟の関係になるんだけど(またこの感じ)
繊細な演技がやはり絶妙。彼の立場が一番辛いところも同系。
ラストのラストでイラがノアに云う一言が啓示の解釈を物語り、
宿敵カインの言葉にも一理ある。的を得た台詞から学べる作品。
(でも仕上がりとしては今一歩。どす黒い映像が先行しちゃって)