とらわれて夏のレビュー・感想・評価
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たった5日間でも、人生を変えるにはじゅうぶんの時間
たった5日間のフランクの脱獄劇は、はらはらしながらも予定調和の結末。
囚われた母子が犯人に寄り添ってしまう「アムステルダム症候群」的な映画で、妻夫木主演の『悪人』を僕は思い出していた。
ボディコンタクトが露骨すぎるとか、なんで隣人に見つからないのかとか、ちょっと都合のいいストーリーだなあと観ていたが、終盤、5日間が終わったあとからの3人の生き方に感銘を受けた。
アデルはもちろん、息子のヘンリーの人生をも大きく変えた、フランクという人間の大きさにしびれた。
たった5日間に育んだ信頼が、28年たっても薄れない。3人とも。フランクの28年、アデルの28年、ヘンリーの28年。それは空白の失われた時間などではなく、再会のための熟成期だった。なんと深い愛だろう。
ストレートな良作
ジェイソン・ライトマンって負け犬な人を愛嬌よく描く名人だな。なんか何があっても生きてることを肯定したくなる。人間が面白いんだな。「ジュノ」「マイレージ・マイライフ」「ヤングアダルト」全部好きだな。
きんちょうの夏。
観方によって好き好きが分かれそうなドラマなんだけど、
俳優たちの演技力で不自然な部分をカバーしている作品。
仕事不詳で鬱気味の母親をせっせと世話している息子くん、
彼が語り部であり彼目線で描かれていく物語。
なぜこのお母さんアデル(ケイト)がそうなったかは、徐々に
明かされていくけど、決定的なのは何度にも渡る流産と死産。
心も身体もボロボロのところへ、夫は秘書と浮気し離婚に至る。
二人の間に生まれた息子ヘンリーは、週に一度再婚した父との
食事会に参加している。このお年頃って非常に難しい。
そんなところへ脱獄犯!J・ブローリンだもんな。まさに適役?
この脱獄犯フランクにも謎がたくさん。まず脱獄理由が知りたい。
彼の過去(つまりなぜ殺人に至ったか)はのちにフラッシュバック
されるのだが、これもめっぽう辛い。アデル&フランクなんていう
コンビでも組めそうなほど(ゴメンなさい)二人の不遇は似ている。
脱獄犯とはいえ、料理は巧いし力仕事をホイホイとやってくれる。
みるみるうちに家はキレイになり、ヘンリーは草野球まで教わる。
非常にほのぼのとしていい場面なのだが、こんなことやってたら
普通バレるだろ!と心配になる。アデルは鬱だというが、次々と
友人が訪ねてくる。これで5日間保てたなんて、奇跡だと思った。
さらにはヘンリーの、なんて優しい母親思いの息子なの!と絶賛
したくなるあの忍耐ぶり。でも息子って母親にはそうかもしれない。
離婚してからめっぽう塞ぎこんでいた母親が、脱獄犯にときめいて
女を取り戻していく様子が生々しく、さらに息子の方も相手の男を
嫌いではないのだ。こりゃ脱獄犯にはうってつけ!の環境である。
なぜ脱獄したのかは結局語られないが、アデルに一目惚れした感
のあるフランク、いよいよ家族でカナダへ逃避行だ!と話は飛躍。
そう上手くいくワケないだろーよ…と思っていると案の定、
さまざまな角度方面から周囲が不信の目を向け始めるのだったが…
出色は息子ヘンリーの抑えた演技と、謎の転校生少女の出現。
あのアヴリルみたいなアイメイクの女の子が繰り出す悪態の数々に、
もうヘンリーの心は乱れまくり!母は自分を捨てるんじゃないか、と
心配で仕方ない(さらに性への目覚めもあり)精神不安定な状態に
陥りながらも、何とか二人についていこうと踏ん張っているという…
ねぇやっぱり思うんだけど、本当にこの二人を幸せにしたいんなら、
逃げていないでしっかり刑期を務め上げ、それから一緒に暮らせば
いいじゃないよと、まともなことを考えてしまうから話にならない私。
え、スパイダーマン!?と思ったらそうだった。あらビックリ^^;
ラストに向けてあのピーチパイが活きてくるという心憎い演出。
不幸を命一杯味わった人は、幸せにならなきゃ不公平だからね。
(あの巡査J・ヴァン・ダー・ビーク!?ドーソンの小川だ~懐かしい)
嵐のように救われるということ
夏の終わりの5日間が、自分をとらえて離さなかった過去の苦しみから鮮やかに救ってくれる。そしてその5日間が今度は未来をとらえて離さない。
なんで脱獄したかったのかがよくわからなかったけど、美しい救いの映画だった
涙・・
いゃぁ、いい映画^^
涙・・・。
お金で解決出来ない空虚な心を満たしてくれるのは、心、優しさなんですよね。
ケイト・ウィスレッドは、相変わらずいい女優ですね^^。
ジョシュ・ブローニンのフランクに、感情移入^^。
いい映画です。
硝子細工の様な繊細で切ない緊張感!
冒頭、脱獄犯と人質の母と子…
っていうわりには、穏やかな日差しとアコースティックギターの調べが心地良く、緊張感があまり感じられない。
このままで 大丈夫かな?何て思っていたら…
焦点はそんな所では無いことに気付かされ、
三人の人間関係が出来上がるにつれ、違う意味での、硝子細工の様な繊細で切ない緊張感が生まれて来る。そしてラストに… 涙。
とても良い作品でした。
ケイト•ウィンスレットは本当に役に恵まれた役者さんだなと改めて感じました『レボリューショナリーロード』もそうでしたが、見た目の華やかさより、病んだ役が良く似合う。
丁寧さと繊細さ
とにかく美しい映像と音楽。
そして、繊細な演出で切なさを掻き立てる。
正直、ストーリーは手垢の付いた話だし、あくまで予定調和的に収斂していくが、変に捻らないでこれは正解。
安心して物語に浸れます。
職人芸的良作。
日常に疲れた大人のための、癒しの御伽噺ですよ。
母子家庭のこの輝きの夏の出来事が2人を新しい世界へと誘う
或る出来事に因って、引き篭もりになってしまった母。
そして、その母と暮らす中学生の息子。片田舎のアメリカでこの親子が経験した一夏の或る衝撃的な出来事を描いているこの作品は、途中からは涙が溢れるような感動で、男泣きしてしまい少しばかり恥ずかしい思いをした。だが快いラストには本当に感動して、こう言う映画のラストシーンは決して忘れられない映画として記憶に残る作品だ。
始まりのシーンは「マディソン郡の橋」を想い起すような、のんびりと時間が静止しているような50年代のアメリカの田舎を想わせる風情があった。
でも、この映画は70年代後半のお話だったけれどね。広いアメリカの田舎の70年代80年代は本当に未だ未だのんびりしていて平和的ですね。
映像的にも自然が美しいし、少しだけ物語の先がどう展開して行き、ラストは一体どうなるのか?と言うハラハラドキドキ感が有る堪らない作品でもありました。
そして結末は本当に、切ない哀しいラブストーリーでした。
何だがこう言う作品は、一時代も二時代も昔のような純情なラブストーリーで信じられないお話ですが、こんな話が2010代の現代に有っても、良いのではないだろうか?
作品を観ていると、人間の本当の価値とは何だろうか?と何度となく考えた。
私などは酷く単純なキャラなので、犯罪者は悪、犯罪者を描く作品はNOと言いたい方なのだが、この作品を観ていると人の善悪や、人間が人間を愛する事。
信頼する事、家族の絆とは? と様々な事柄に付いて考えさせられる。
家族の血は何よりも果たして濃いのだろうか? そこには大きな価値と絆が有り、護るべき事でもあるけれど、逆も真なりで、それのみが最重要視されるべき事では決して無い事を改めて嫌と言う程この作品では考えさせられる。
あなたは、愛する家族と最近どんな会話をして、どんな思い出を作りました?
GWで丁度お休みを取って家族の絆を深くする事は出来ましたか?
出来たら御夫婦で、この作品観に行かれると良いと私は思うのです。
そして、あなたはどんな素晴らしい時間を、これから家族と共有出来るのでしょうか?
甘酸っぱい、ピーチパイでも出来たら是非、この映画の様に手作りして、家族みんなで楽しい時間を送ってみたらどうでしょうか?
映画は決して観るだけの物ではないですよね?映画から学んだ数々のエピソードを自己の生活に生かしてより豊かで素敵な実生活を営まれる様になったら、更に貴方の人生も豊かな実りになるのではないでしょうか?さあ人生の新しいページを一緒に始めようよ!
生きる気力を失ったヒロインの絶望した姿が、物語にリアルティをもたらしたくれた
脱獄犯と恋に落ちるなんてあり得ないと誰しも思う事でしょう。けれども愛を失った女の悲哀を丹念に描くことで、究極の状況で生まれる愛を見事に伝えてくれた作品となりました。
『JUNO/ジュノ』『ヤング≒アダルト』など、自分で納得がいく生き方を選ぶ主人公を共感をこめて描いてきたジェイソン・ライトマン監督。原題“労働の日”は9月1週目の月曜日、夏の終わりの5日間の出来事を描いたことによります。
物語の舞台は、1987年のアメリカはニューハンプシャー州の田舎町での話。ご当地の人でなければ、そこってどこよと首を傾げる人ばかりでしょうけれど、要するに一昔前のアメリカの田舎町たたずまいとか、まだ携帯もなかった時代のコミュニケーションの取り方とか、そんな年代と地方が感じさせる特別な匂いや風情に加え、晩夏ならではのうっとうしい暑さという映画のルックにこまかく神経を使っている作品であることをよく描き込まれていたと思います。
この静かな町のはずれに、夫と別れてから重い鬱にかかったシングルマザーのアデル(ケイト・ウィンスレット)とまだ13歳ながら、この母を自分が守らなければと思っているけなげな息子ヘンリー(ガトリン・グリフィス)とが、二人でつつましく暮らしていたのでした。アデルは、一人息子を世話するというより息子に守られることで辛うじて生活する状態だったのです。
父のいない家で、幼い息子が弱い母を守る気でいるというのは、古い西部劇以来のアメリカ映画の伝統的なテーマですね。
アデルは、ヘンリーと一緒にスーパーに行ったところ、屈強の男(ジョシュ・ブローリン)が息子を捕まえ、家に連れて行けというのです。何の抵抗もなく、男の要求に従って家まで案内してしまうのは、疑問でしたが(^^ゞ
聞けば、フランクと名乗るこの男は刑務所から、盲腸の手術のため病院に移されたのを機会に脱獄したばかり。息子が人質にされたなら、脱獄犯から子供を守ろうと母親が頑張るという展開になるものとばかり思い込んでしまいました。普通のサスペンスならそういう展開が普通でしょう。
ところがフランクは一見して怖そうな男でしたが、意外と繊細な神経の持ち主でした。散らかり放題になった家を掃除し、床を磨き、母子の家を修理をマメにこなしていきます。またヘンリーに車の修理を教え、キャッチボールの相手をする姿はまるで父親のよう。 母子は捜査して回っている警察や近隣の人々の目から、つい成り行きで彼をかくまってしまう。そして次第に家族の一員として溶け込むフランクに、アデルは次第に女としてのこれまでの満たされてこなかった思いをぶつけるようになっています。二人で一緒にパイを作る様子がそのままラブシーンに見えてきたり、ふたりが短時間で恋に落ちてしまう過程はちょっと素敵な描き方でした。
母ではなく女として生きたいのにためらいがある母と、フランクに父親像を重ねる息子。そしてフランクには心ならずも殺人を犯した過去がありました。3人の俳優たちの息がうまくあい、信頼が増せば増すほど逮捕の時の迫る不安が増してきます。招かれざる来客が、何度も逮捕のピンチを感じさせるハラハラ感を増幅してくれました。追われる者の緊張感がマックスに向かうほど、実りそうにない愛の辛さが浮き上がっていったのでした。
フランクと一緒にカナダに逃げる恋の逃避行の計画が実行に移されることになって、持ち上がるヘンリーの不安。それは2人は自分を置いて出ていくのではないかといあらぬ疑いでした。けれどもアデルとフランクが交わす視線を盗み見る少年の心は穏やかではいられなかったのです。この物語は、大人へ脱皮しつつあるヘンリーの性への目覚めと葛藤が描かれる面も持っていたのです。しかし本作にはベッドシーンなど官能を描く描写は皆無。あるのは心と体の飢えが満たされることのささやかな幸せなんですね。
心の不安がヘンリーをつき動かして、実の父親への置き手紙を残すことに。結局この置き手紙が、波乱を生むことになり捜査の手が迫ってくるのです。
ここで終われば、ああそういうものかで済ませることもできたはず。けれどもやがて年月が過ぎて大人になったヘンリーに、フランクが彼と母に作ってくれた例の桃のパイが思いがけない人生の贈り物に繋がるところが、余韻を膨らませてくれる後日談でした。そして何よりもラストの心温まる展開が、心地よく胸に染みいったのでした。
大人の愛と再生を優しく見つめたラブストーリーとして、とてもデリケートな感触でこの夏の5日間の出来事を描いている作品。物語が一旦終わるその後も、3人が送ったそれぞれの人生を想像させ、忘れ難い哀感が残る佳品としてお勧めします。
何と言ってもヒロイン役のケイト・ウィンスレットの熱演のおかげで、生きる気力を失ったヒロインの絶望した姿が、物語にリアルティをもたらしたくれたことが特筆に当たりますね。
予想外の展開は期待しないで
まずこの映画にはなんら衝撃の展開はない。これでもか!というくらい予想通りにストーリーは進んでいく。
個人的に最後の最後でどんでん返し系の映画の方が好きだ。でも逆に予想を裏切らない内容で観客を引き込む映画のほうが心に残る事が多い気がする。下記のあらすじは全く大げさすぎるし、トビー・マグワイアはほんの2、3分しか出てこない。それでもこの映画をみてよかったか?と聞かれれば見てよかったと答える。まず、映像がとても綺麗だった。まるで森林浴をしているような落ち着いた雰囲気が常にスクリーンから伝わって来た。一部音響などでビックリするシーンはあるが、凶悪なシーンも残酷な描写もなく、「このままの時間が続けば良いのに」という「心地よさ」を上手に表現している。
ファミリー向けではないし、友達とわいわい見る感じでもない。かといって恋人と見るほどのラブストーリーでもないから1人で見るのがいいかもしれない。
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