「『恐怖の根源』と『テクノロジーの傲慢』の二重螺旋構造」プロメテウス 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
『恐怖の根源』と『テクノロジーの傲慢』の二重螺旋構造
なるべくネタバレ無しで書くが、真っ白な気持ちで観たい方は読まないで下さいね。
未見の方にひとつ言うなら——『エイリアン』ほどの純粋な恐怖は期待しないでほしいという事。
それは決して『プロメテウス』が『エイリアン』に劣るという意味ではない。
そもそもこの2作はベクトルが微妙に異なる。
本作は『エイリアン』の世界観の根源だけでなく、それ以上のテーマをも描いている。
即ち、知識欲を満たす為なら人命をも軽視する、科学の傲慢さ。
この2つのラインが、さながら冒頭の遺伝子の二重螺旋構造のように交錯している。
あるアンドロイドの問い。
「なぜ私を造ったのですか?」
対する人間の回答。
「造れたからだろ」
無感情な筈のアンドロイドの顔が、一瞬歪む。
科学は人類を豊かにしたが、同時に人類を絶滅の淵に追いやってもきた。
毒ガスも原水爆も科学の産物だ。本作と関連が深いだろうクローン技術もそうだ。
無神論者の僕はクローン技術という代物が“神への冒涜”だかどうかは知らない。
だが、生命の価値を軽視しているという恐怖は抱く。
そしてその姿勢が、いずれ人類を恐ろしい方向へ追いやるのでは、とも。
知識欲が人の性(さが)である事は否定し難いが、
その欲望の終着点が必ずしも幸福とは限らない。
言うじゃないか? 好奇心は猫をも殺す。
『知りたい』と思わなければ彼等があんな恐怖に曝される事は無かった。
『造りたい』と思わなければ“創造主”が破滅の道を歩む事も無かった。
あの恐るべき“創造主”は未来の我々だ。
この物語は、生命を油粘土のように弄ぶテクノロジーへの警鐘なのだと思う。
難点は、
『エイリアン』を彷彿とさせるシーンがやや多過ぎる点。
J・ゴールドスミスと違い、些か騒々しいスコアに幻滅した点。
そしてやはりオリジナルと同じ位にねちっこい恐怖描写も欲しかった点……いや、
今のままでも十分おぞましい映画だと思うので、これは高望みってヤツかしらん。
だが僕はこの映画をメチャクチャ楽しんだ。
本作には恐怖、スペクタクル、カタルシスがある。
『エイリアン』前日譚としても単品としても綺麗に纏まっていると思うし、
スクリーンを埋め尽くす星々、荒涼とした惑星表皮、鈍色の激流など、
映像も「これぞ匠の業」と唸る出来。
ここ半年で、久々に3Dで観て良かったと感じた映画でもある。
評判イマイチのようだが、個人的には見事!な出来。
<2012/8/4鑑賞>
先日は、コメントをありがとうございました。
きびなごさんも、結構楽しまれたようですね。
「テクノロジー~」の部分は、私も書きたかったのですが、長大になりそうなのでやめました。
医者が、人の命を救うためなら、どんな実験をしても良いかと言えば、そうではないですものね。
監督の技が冴える1作品だったと、私も思いました。
私は、何でも楽しんじゃう方なので、私の評価はあまりあてにはならないと思います。
思いついた食べ物は、ドーナツではなく、もう少し固いベーグルでした。
同じようなものですね。うふふ~。
「クリムゾンタイド」のレビューを書かれていたようなのですが、
何故か、読むことができません。
私の大好きな作品の一つですので、残念でした。
くれぐれも返信にお気遣いなきようにしてくださいね。