「頸椎捻挫!準備運動をしてから観てください。」プロメテウス さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
頸椎捻挫!準備運動をしてから観てください。
首を傾げ過ぎて頸椎捻挫になる可能性があるので、準備運動をしてから観るのをおすすめします。
ちょっと長くなりますが、お付き合いください。
宜しくお願いします。
「エイリアン・ゼロ」的な映画である。いや違う!と二転三転した本作。結果、エイリアン1の前日譚となっています。
嫌な予感しかしなかった「プロメテウス」と対峙するも、首を傾げ過ぎて頸椎捻挫になりそうでした。
沢山の謎がある中、面白いシーン、いや、かなり意味不明なシーンを論ってみます。
1,冒頭、白塗り巨人は何をしてるの?
2,「私のオフィスで10分後ね」の結果が知りたい。
3,急にデヴィッド(アンドロイド)の頭をもぎ取る、巨人のメンタリティに迫ってみる。
4,老けメイクだけで死ぬ、合併前「ウェイランド社」社長役イケメンのガイ・ピアーズの立場がない件について。
5,おい!何故、横に転がらない!?
6,常に人間より一歩先を行く、お仕事できるアンドロイド。デヴィッド(マイケル・ファスベンダー)の何か知ってる感が凄い。
7,攻める女、ショウ博士はリプリーを越えるか?
1,冒頭、滝が流れる壮大なシーン。白塗りの巨人が何か黒い液体を飲み干し、急に身体がグズグズになって滝に落ちて行きます。
こいつ誰?何してるの?って疑問はだいぶ後から判明するので、首を傾げながらスルーします。
できれば冒頭はスルーではなく、心を掴んで欲しいものです。
2,人類誕生の謎解明プロジェクトの責任者・メレデイス(シャーリーズ・セロン)は、無表情で冷淡な女です。
プロメテウス号のキャプテン・ヤネックに「本当はアンドロイドなんじゃないか?」 と言われるくらいに。
「私のオフィスに10分後ね」
メレディスはそういって、消えます。あとには、満更じゃない笑みを浮かべるヤネックが残される。
あら、この二人イイ感じになるの?
と思いきや、その後のシーンはありません!
二人っきりのシーンすら、ありません!
あのー、シャーリーズ・セロンのお誘いに乗ったのか、乗らないのか?
10分後どうされたんですか?気になるので教えてください!
※惑星に到着したが、山のようなでかい建物と滑走路しかありませんでした。
3,(建物散策で持ち帰ったでかい顔から、人類とこのでかい顔は同じDNAを持っていると判明します。ここで人類創造者=エンジニアとするよ!と宣言。エンジニアは黒い液体を飲んで、崩れた自分の身体から人類を作ったんでしょうね。それが冒頭のなんだか分からないシーンです)
「諸君達がこの映像を観てる頃には、私は死んでいるだろう」と言っていた、今回のプロジェクトの出資者 「ウェイランド社」社長ですが、どっこい生きていることが判明します。
しかもプロメテウス号に乗っています!
理由は、惑星で不死の身体になりたいから。
あ、その前に建物の中で、エンジニアの計画を発見します。どうやらエンジニア達は人類を作った後に、重度の被害妄想に陥ったみたいですよ。
いつか人類が攻めてくるのでは?という恐怖に支配され、対人兵器:エイリアンを作っているらしいです。
この惑星は、そのエイリアン製造場。しかしその過程で、エイリアンの獰猛さに逆にやられてしまったから、この惑星には妙な建物と滑走路しかないんだ!
あくまでキャプテン&ショウ博士の推測ですが、こんな感じです。
(となれば、エンジニアは2メートルくらいある巨大な身体をしていながら、肝っ玉の小さいやつらということになりますね)。
ウェイランド社長は建物散策について行き、たった一人で眠るエンジニアを発見。接触を試みる。
デヴィッドに「不死の身体をくれと言え」と急かします。エンジニア語?で語りかけるデイビットの首を、急にぐきっともぎ取るエンジニア!
あの、クッション言葉がなかったからですか?
あの、寝起きで不機嫌だったからですか?
多分ですね、不死の身体になる=創造主であるエンジニアに迫る=神に近付く気か!激怒!な構図ではなかったかと思います。
てか、こんなに怪力で強いなら、エイリアンを作る必要なんかないじゃん。
4,ここでウェイランド社長は死ぬんです。
謎なんです。
社長をイケメンのガイ・ピアーズが演じています。むっちゃ老けメイクで。
なんでおじいさんの俳優を雇わない?何故、若いイケメンに敢えて老けメイクをさせる?因みに、ガイ・ピアーズの若い頃、一切出て来ません(笑)なのでクレジット見るまで、ガイだと気付きません。
どういうこと!?
5,エンジニアは黒い液体を積んだ宇宙船で、地球に向かおうとしています。
ショウ博士は言います。あの黒い液体で人類滅亡を企てている!どうにか止めなければ。
しかしプロメテウス号に、戦闘機具は一切ありません。残る道は一つ!さぁ、いざ体当たり!
モブ感ハンパなかった乗組員達がいきなり男気を出して、「あの世で会おうぜ」的なムードになるのでびっくりします。
体当たりした後、U字便座型宇宙船がドドーンと地面に落ちてきます。ショウ博士、メレデイス逃げて!
U←こういう形だから上から落ちて来た際には、横に転がれば逃れられると思います。しかし、あくまで直線に逃げたがるメレデイス。
結果、宇宙船に潰されます。なんで横に転がらない!?
6,プロメテウス号もエンジニアの船も全部駄目になってしまい、地球に帰れないじゃん!の、ショウ博士と首だけのデヴィッド。さてどうする?
「エンジニアの宇宙船、もう一隻あるよ」
と、デヴィッド。
デヴィッドはなんだか、諸々知ってる感があるんです。
建物からこっそり持ち帰った妙な欠片を、ショウ博士の彼氏に飲ませてみたりするんですよ。
その彼氏とエッチしたショウ博士は、絶対妊娠しない身体なのに身籠もります。ええ、例の奴をですよ。
このデヴィッドが好きな映画が、「アラビアのロレンス」です。
アラブ人の中に一人のロレンスと、アンドロイド一人の自分の状況を重ねているのでしょうか?
ロレンスはアラブ開放という理想の元に、戦争で幾つもの武功を挙げます。が、仲間を失い、結果的に英国にもアラブにも理解されず、最後は事故で亡くなりますよね。
7,もう一隻あった船に乗り込むショウ博士。
デヴィッドは「操縦の仕方を知ってる」とか言います。やっぱり諸々知ってるよね!?
そして、エンジニアの星に向かいます。ええ、地球には帰りません。エンジニア達の母星に行き、なんで人類を滅ぼしたいのか真意を確かめたい!
そう、ショウ博士は、攻めるタイプの女なんです。
ショウ博士はこの戦いの前に全自動手術台カプセルに入り、お腹の中の例の奴を取り出す手術をしています。その裂かれたお腹は、まだホッチキスとめのまま。
さっきも船の中を走り回り、巨人とぱっと見イカ星人(ショウ博士がお腹から取り出した例の奴が瞬時に大きくなった)とを戦わせたり、そしてメレディスと違って縦に逃げず、地面を横に転がったりしてます。そして更に、母星まで行ってやる!
なんでしょう?痛みに強すぎます。
本作は人類を創造したエンジニアが、理由は分かりませんが「取り敢えず、人類を全員殺す!」
となった映画のようです。自分達の予想以上に人類が力を持ったことへの恐怖なのか?怒りなのか?そうなると2001年宇宙の旅のオマージュでもあるのか?と思うんですが、でも本作のタイトルは「プロメテウス」ですから。
ギリシャ神話の「プロメテウス」をご存知ですか?
人間に火を与えて、ゼウスから罰(内臓を大鷲に食べられる)与えられたプロメテウスを。
プロメテウスは神なので死にません。ただ苦痛を感じるだけ。永延に。
人間と神々が祭儀のことで争っていると、プロメテウスが間に入るんです。元々プロメテウスは人間びいきなので、ゼウスと直談判してやります。
肉と臓物などの食べられる部分は牛の皮で包んで、骨は脂肉で包みます。
「どちらかお好きな方を選んでください」
ゼウスは一見すると美味しそうな、脂肉を選びます。でも中身は骨ですよね?ゼウスは騙されたことに激怒して、人間に運命を与えます。
骨は腐らない。けど肉と内蔵は腐る。人間にもこの運命を与えよう。つまり死です。しかもいつか死ぬ人間に、圧倒的な力である火は与えられないと取り上げます。
哀れに思ったプロメテウスは、天界から火を盗み人間に与えます。
あれ?と思いませんか?神々にも、人間にも属さず、酷い罰に苦しむプロメテウスの立ち位置は、「アラビアのロレンス」でアラブからも英国からも理解されなかった、ロレンスと重なりませんか?
そのロレンスに憧れるデヴィッド。なんだか色々知ってるデヴィッド。あぁデヴィッド、デヴィッド……。
プロメテウスは神々の一員でしたが、デヴィッドは?
神であるプロメテウスに死がないように、アンドロイドも死はない?
ではゼウスは誰で、火とは何でしょう?
一人生き残ったエンジニアの怒りのポイントは、もしかしたら「与えられた死(エンジニアが作った運命)を、人間ごときが帳消しにしろと迫って来た」ということだったかも知れません。
本作は、中途半端に「エイリアン」で人を寄せようとしなくても良かったと思う。
私が首を傾げた謎が、続編(2016年3月公開予定)で明かになることを願っています。
取り敢えず、ガイ・ピアーズの若い姿が観られるといいですけどね(笑)
長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。