「時間よりも感情が足りない [スコア修正]」TIME タイム 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
時間よりも感情が足りない [スコア修正]
リアリティあるSF映画に滅法強いアンドリュー・ニコル監督最新作……
って紹介しちゃっていいんかなあ、この映画。
予告編を観ても「なぁんか力の無い画だのう」と感じて観る気が起きず、
後で彼の監督作だと知って、それならと鑑賞してみたのだが……
なんでしょーかね、この盛り上がりに欠ける感じは。
他の方々の判定を見て心構えはしてたけれども。
ツッコミ所(とJ・ティンバーレイクの浮き加減)については
他の方々が語り尽くしていると思うので、ちょっと違う所を書いてみようと思う。
人間の寿命が“通貨”として扱われ、
寿命を独占する富裕層と、寿命を搾取される貧困層とに別れた未来社会。
言うまでもなく現代の格差社会を揶揄する内容ですね。
現実でも全人口のたった1%が残り99%と同じだけの資産を独占し、
更にそのリッチなお歴々は政治にも大きな影響を与えて自分達の利益を守ってるんだとさ。
腐るほど金を持ってると性根まで腐ってくるんですね、へぇ〜。
劇中でも、富裕層の人間は社会の支配者として描かれていた。
時間犯罪捜査局のレオンがあの仕事を50年続けていると話していた事を考えると、
あの体制は最低でも50年は続いているのだろう。
で、ひとつ疑問。
「この体制に不満を感じて反旗を翻した人間が、50年も現れなかったのか?」
現実なら当然おかしい。
そりゃ時間は足りないし、ばれたら即殺だろうが、
小規模でも何らかの反政府活動が行われて然るべきではないか?
(監視カメラや捜査局員の数も大して多くないし、難しく無さそう)
可能性があるのは主人公の父親だが、彼が何をしてたかは結局サッパリ分からず。
息子の方なんて、聞くまでもないような『世界の真実』に
今まで気付いてもいなかったようだし。
思えばレオンが武器も無しで貧民街に取り残された時も、
住民達はじわじわ寄ってきて挑発するだけだった。
彼らはもっと攻撃的でも良かった筈なのだ。
何せ相手は、自分達の命を搾取する憎き連中の手先なんだから。
つまるところ、
この映画には“怒り”の感情が決定的に欠けている。
人を道具のように扱い、挙げ句は親や友人をも死に追いやる
システムへの怒りが、まるで伝わってこないのだ。
これでは主人公達がいくら活躍してみせた所で
それが切実なものとは感じられない。
世界観の作り込みも足りないが、何よりエモーションが足りない映画かと。
<2012/3/3鑑賞>