人生、いろどり : インタビュー
実話から生まれた「人生、いろどり」 主演吉行和子、女性の生き方に感慨深める
四国で一番小さな町から生まれた、奇跡の2億円“葉っぱビジネス”の実話を元にした「人生、いろどり」が、9月15日から公開される。オファーから4年、撮影を心待ちにしていたという主演の吉行和子に、本作への思いを聞いた。
徳島・上勝町はみかん産業が全廃し人口減少も進む、活気を失ったいわゆる過疎地だった。しかし1人の若者・江田(平岡祐太)のアイデアから、山で採れる葉っぱを料理の“つまもの”として販売するビジネスが動き出す。町中から猛反対されるなか、面白半分で賛同したのは花恵(富司純子)。その花恵の誘いを断れず参加することになったのが薫(吉行和子)、幼なじみで次第に仲間に加わっていくのが路子(中尾ミエ)だった。はじめはゴミ扱いされる葉っぱだったが次第に売り上げを出すようになり、町の人々の気持ちも変わり出す。人生をあきらめないことの大切さや様々な形の絆を描く、ぬくもりが詰まった作品だ。
葉っぱビジネスの存在を、ニュースなどでずいぶん前から知っていたという吉行。周囲に相手にされなくてもあきらめず、ビジネスを始めた町の人の姿勢に強く引かれたと語る。「今の日本人は消極的で、何をやってもうまくいかないと思ってしまいがち。でも実際にこのビジネスを起こした人たちは、『どうなるかわからないけど、とりあえずやってみよう』と思った。その勇気が一番素敵だと思ったんです」
そして江田を筆頭とし、女性たちは動き出す。「他の農家の人からは、そんなものが売れるのかってゴミ扱いされてしまうんですけど、『それでもいいじゃない、やってみよう』って女性たちは思うんですよね。その時あきらめなかったことが成功につながったのだと思います。この映画はたまたま葉っぱが題材のものですけど、世の中にはチャレンジすることが一杯ありますよね。この映画を見た人には、何かにチャレンジする“きっかけ”を感じてもらえたらうれしいですね」
農村の再生を描く一方で、夫婦の絆を見つめる側面もある。「夫婦がどうやって再生していくか、家族がどうやって絆を強めていくかも描かれているんです。薫はだんなさんの言う通りにすることが当たり前で生きてきた女性だったけど、葉っぱビジネスをきっかけに、初めて自分の意志で歩き出すんです。だけど決してだんなさんを置いていこうとはせず、一緒に喜びを分かち合ってほしいと思い続ける。薫のそういう気持ちは本当に素敵だなと感じていました。だから、演じる際はそこを特に大切にしていましたね」
映画には、地元のエキストラも多く出演した。現地の人たちとの交流は実に感動的だった、と吉行は振り返る。「“一緒に作る”という意識を本当に強く持ってくださっていたんです。エキストラの方々も私たちも、“同じ土壌にいる出演者”という気持ちでやらせていただきました」と、笑顔で上勝町に敬意と感謝を示した。