RIVER(2011)のレビュー・感想・評価
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「のんびり、流されよう」
「ヴァイブレーター」「雷桜」など、常に新鮮な話題作を提供し続ける廣木隆一監督が、「君に届け」での好演が記憶に新しい蓮佛美紗子を主演に迎えて描く、群像劇。
あの日から、一年。テレビをはじめとしたメディアは、その残酷な運命と悲哀、それでも前に進んでいこうとする人間の強さを声高に叫んできた。そう、人はいつだって強く、強く歩き出さなくてはいけない。世界はそれを望んでいるし、それを形にして提示することこそが、正義だと信じて疑わない。
本当か?本当に、絶望という名の逆境に逆らうことだけが、正しいのか。この一本の作品は、静かに、控えめに、ただその疑問に確信をもって「NO」と突きつける。そんな立場の映画に思えてならない。
2008年、秋葉原で発生した通り魔殺人事件。その事件で恋人を亡くした一人の女性は、あてもなくその舞台となった街を孤独にさまよう。特に目的もなく歩き続ける女性に意志はなく、ただ目の前に道があるから足を動かす。
映画という一本の作品である以上、その道中には様々なドラマがあり、物語を抱えた人間達が現れる。通常の群像劇ならば、彼らが相互に作用しあい、新しい挑戦なりステージへと展開していく。だが、この物語は違う。
彼らは、流されている。進む理由もなく、ただ息をしている。それでいいじゃない。この作品を大きく貫いている姿勢が、ここにある。
秋葉原通り魔殺人と、あの日の震災。二つの地獄をテーマに据えた物語なのに、観客が不思議と心地よさを感じるのもその所以だろう。
「悲しいよね、つらいよね、でも、前向かなきゃ!ねっ、前、向け!」そんな押しつけがましい励ましが支配するドキュメンタリーとは一線を画し、「別にいいじゃん。泣きたきゃ泣けよ、流されたきゃ流されなよ」そんなゆるゆると突き放す作り手の真摯な優しさが、本作の題名「RIVER」にも表れている。
後半、あの日の震災を強く意識される描写が唐突に描きこまれるが、ここでも作り手は暴力的に「俺、強く生きていくぜ!」となだれこまず、ただ目の前の現実に打ちひしがれる小さな人間を丁寧に見つめる。それが冷たい観察ではなく、「いいよ、無理するなよ」と静かに見守る暖かさに満ちている。そこが、ただ、気持ち良い。
今の日本にあって、前を向いて、涙を拭いて笑顔を作ることは大いに歓迎したい。それが希望につながることは確かだ。でも、それだけじゃやっぱり、つらい。きつい。悲しい。ただ、ふらふらと時間に流される弱さだって、誰かに認めてほしい。
そんな、映画だと思う。きっと、今、そんな映画があっても良いと思う。
「のんびり、流されよう」
架空人物によるフィクション。
この時点で犯人の刑は確定していない。刑は執行されたが、冤罪だとか精神鑑定の有無の疑問も残っている。犯人は上告出来るのに上告を取り下げて確定している。しかも、急ぐ様に執行までしてしまっている。
まぁ、極悪人だったとしても。この事件に、なぜ風俗や、東日本大震災まで重ねなければならないか?それが全く理解出来ない。
日本映画の不幸を売り物にするDNAの匂いを感じる。
遺族の方々。2つの事件と天災(人災?)の冥福は祈らねばならないが、刑が確定する前にこう言った映画を撮るべきではないと僕は思う。
最後に演出家や製作者サイドに申し上げたい。
「社会的にセンシティブな題材を扱いながらも、真実や被害者・加害者双方の複雑な現実を十分に尊重せず、浅薄な表現に終始したことを、私は深く軽蔑します。あなたの作品が多くの心に不快感を残したことを忘れないでください。」
と付け加えたい。
そして、ご冥福とご多幸を願いたい。
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