劇場公開日 2015年8月1日

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「進撃せよ日本特撮映画!!」進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0進撃せよ日本特撮映画!!

2015年8月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

興奮

友人の話やらテレビでの露出やらでなんとなぁくアラスジ程度は知っていたが、
原作マンガもアニメも未見という相変わらずの無知っぷりで恐縮。
なんでも海外の方ではアニメ版がすんごい人気だそうで、
今回の実写版も海外からの注目度がかなり高いんだとか。
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こういった邦画大作が公開されると、いつも考えることがある。
『海外もターゲットに入れて考えた時に、
 邦画のVFX超大作は一体どこまでやれるのか?』

その点で僕は本作にまるで期待していなかったと明言しておく。
邦画大作でよくあるのは――
テレビ番組のような落ち着き払ったカメラワーク、
ヌルめのアクションにユルめのバイオレンス、
実写との解離が著しいCG・合成シーン、そして何より、
センチメンタルなばかりでテンポの遅いドラマ。
本作もそんな映画になってんじゃねえの?と思ってました。
ええもう全力で思ってましたとも。

謝ります。すいませんでした。
レビュー読んでいる方には見えないでしょうが、
私このレビュー書きながら土下座してます(心の中で)。

いやいやいや驚いた。
ここまでやれるとは思ってもみなかった。
本作で日本のエンタメ映画がまた一段上のレベルに押し上げられたと断言する。
スゲーな『進撃の巨人』劇場版!
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まず特筆すべきは映像面のクオリティの高さ。
これだけのVFX大作において、この重量感、このリアリティは素晴らしい。
CG満載の下手なハリウッド映画より遥かに臨場感がある。

本作の白眉である、生々しく醜悪な巨人たち。
下卑たニヤニヤ笑いを浮かべながら
泣き叫ぶ人間を旨そうにむさぼる姿は怖い。猛烈に怖い。
子どもの頃に観てたらトラウマになりそうなレベル。
モーションキャプチャー+CGにしてはやけに質感や重量感がリアルだと思っていたが、
パンフを読むと実際の役者さんに演技させた上でデジタル加工しているそうな。
ミニチュア撮影なども行われたり、圧倒的存在感のあの大型巨人
についてはアニマトロニクスのような造形物が使われたとか。
素晴らしい。古き良き日本特撮映画の血をしっかり継いでおる。

対する人間側もバッチリだ。
長崎・軍艦島で撮影されたというだけあり、舞台となる街の風景は、
セット撮影では実現不可能なスケール&CGでは実現不可能なリアリティ。
爆破シーンや群衆パニックのシーンも生身の役者さん達がしっかり演じてるように見えるし、
とにかくコンピュータ上で作られた画ではなく、『実物を撮る』事にこだわっている。

惜しむらくはブルーバック撮影で行われたという空中での
剣撃アクションか。ここはやはり“合成チック”に見えてしまう。
だがそれは他のシーンの出来が良いから目立つのであって、
総じてクオリティは高い。
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物語面について。

原作知らない身としてはストーリーやキャラが
どうハショられてるか分からない訳だが、
凄まじい襲撃シーンから防壁爆破に向かうまでの流れは
駆け足ながらも違和感はあまり感じなかった。

どうしてクライマックスであの人がああなったのかはサッパリだが(笑)、
それまで散々殺られっぱなしだった状況を根こそぎ覆す展開に、
「そいつらボッコボコにしてやってくださいよ先生!」と
こちらのアドレナリンとリベンジ魂も全開!

ただし、各キャラクターの人物描写は全体的に薄い。
特にヒロインが序盤ああなって後半ああなる経緯はもう少し詳細に描いてほしかったし、
主人公エレンがグロッキー状態になるシーン多過ぎないかねとも思う(苦笑)。
だが、彼らの闘う動機やその必死さはしっかり伝わる。

あと、なんかミョーに艶っぽい長谷川博己と
ハイテンションギーク(オタク)な石原さとみは良かった。
特に石原さとみは陰鬱な物語にユーモアを加えてくれていて、
最近の出演作の中で一番良い仕事をしている気が。
それにゴーグルがウルトラセブンぽかった(それはどうでもいい)。

“想定外”の大きさの巨人に防壁が破壊されるという流れはイヤでも3.11を連想させるし、
平和に慣れてしまった世界で突然理不尽な暴力に晒された時の恐怖も、
ここ最近の日本においては思うところが大きい(と述べるに留めておく)。
だがまあ、そんなテーマは匂わせる程度。
基本はあくまでウルトラバイオレントなVFXアクションだ。
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以上!
原作ファンの方々からは色々意見あるかもだが、
個人的には予想のずっと上を行く出来。
判定4.0か4.5かで迷ったが、物語にまだまだ謎な部分も多いので、
今回はひとまず4.0判定として、後編を観てから改めて判断したい。

最初に登場した大型巨人の行方、そして巨人たちの正体、
これからの戦況の鍵を握るのであろうエレンの力、
何らかの事情を知っている様子のソウダ、
ボロ布で顔を隠した謎の人物の正体とその目的……

数々の伏線をバシッと後編で締めることができるのか?
今から楽しみにしてます。

<2014.08.01鑑賞>
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余談1:
鑑賞前の注意点として書いておくが本作、
PG12で通ったのが不思議なくらいに残虐な描写が多い。
人体欠損描写はザラだし、血は(色を黒っぽくしてるが)
大量に流れ出るし、何よりシチュエーションがエグい。
小さな子どもを連れて観に行くのは、僕はあまりオススメしない。

余談2:
原作にはほとんど興味が無い自分だったが、
監督の樋口真嗣氏が次の日本版『ゴジラ』を手掛けるので、
新『ゴジラ』に期待できるか見定めたいというヘンな思惑もあって本作を鑑賞。
個人的には、ちょっと新『ゴジラ』も楽しみになってきた。

浮遊きびなご