映画レビュー

街を全部撮る

2025年1月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 アメリカ北東部の古い街、メイン州ベルファストの20世紀末の姿を徹底的に撮り尽くそうとした4時間の作品です。一つの施設・場所の裏から表までを記録すると言うのはワイズマンの基本的なスタイルなのですが、そこには監督の視線や立ち位置が当然伺えます。ところが、本作では監督が何を撮ろうとしているのかが良く掴めませんでした。

 様々なお店や職業が出て来ます。エビ網漁、クリーニング屋、ドーナツ工場、バレエのレッスン、コインランドリー、ペットショップ、医師の往診、市議会聴聞会、教会でのコーラス、病院、キツネの皮を剥ぐ人、南北戦争の講義、結婚の意味を語り合う市民、アル中の父親のDVを訴える女性、等々。それは一地方のリアルな姿なのでしょうが、その映像の向こうにある物が僕には見えないのです。でも、何かがある事は確かに感じられます。ワイズマン作の中でも取材範囲を特に広げているせいでしょうか。

 もしかしたら、撮っていない物をこそ監督は見せたかったのかも知れません。そう考えると、街を隅から隅までと言っても本作では若者や子供が全くと言ってよい程出て来ません。高校での授業は紹介されますが、先生が喋り続ける姿が見られるだけで、生徒の声は全く紹介されませんでした。

 老いゆく街を見せたかったのかなぁ。いや、そんな安っぽい狙いではないだろう。物凄く気になる一作でした。

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La Strada