「本当に“最後の海賊”でいいかも」パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
本当に“最後の海賊”でいいかも
キャプテン・ジャック・スパロウ、6年振りにヨーソロー!
説明不要のメガヒットシリーズ第5弾。
今やすっかり映画界を代表する超人気シリーズとなったが、正直自分は、“あなたのことはそれほど”。
勿論これぞハリウッド!とでも言うべきエンターテイメント大作として素直に楽しいし、1作目は海賊映画を現代に蘇らせた快作だった。2作目もまあ面白かった。が、3作目はごちゃごちゃし、4作目はもう新味ナシ。
加えてジョニデの人気も下降した今、まだやるのかよ、と。
一応夏の話題作だし、シリーズも全部観てるので、今回も観に行ったが…、
「パイレーツ~」もここまでかな。
ストーリー、アクション、VFX…どれを取ってもいつもと同じ。
アクションは喜劇かコントかただ落ち着きが無く騒々しいだけ。
亡霊船に異形のキャラ、“宝の星空”、割れる大海原…VFXはそれなりに魅せるものがあったが、そろそろ出尽くした感。
たっぷり予算かけた迫力とスケールは見てて楽しいのは楽しいが、心底満たされるものは無かった。
その最たるが、ストーリー。
毎回毎回アイデアを出して奇想天外な海の大冒険を繰り広げるが、本当に面白かったのは、シンプル・オブ・ザ・ベストの1作目だけ。
今回は父ウィルの呪いを解こうとするイケメンに成長した息子ヘンリー、その鍵となる“ポセイドンの槍”、それを狙う大英帝国など要素は詰め込まれているが、どれが主軸かブレ、何かこう、惹かれるものに欠けた。
それを盛り上げるべきは、敵。
ジャックへの復讐に燃える“海の死神”の異名を持つ“シリーズ最凶の敵”、サラザール。
強烈メイク、なびく髪、亡霊手下を従えるハヴィエル・バルデムの怪演はインパクト放つが、それにしてもデイヴィ・ジョーンズと言い黒ひげと言い、“シリーズ最凶の敵”が何人も…。“最凶”ではないが“シリーズ最高の敵”はやはり…(“彼”については後ほど)
話題の一つのウィルとエリザベスのカムバック。が、単なる客寄せ程度。
それでも今回期待していたのは、海洋アドベンチャーの秀作「コン・ティキ」の監督コンビの登板。何かシリーズに新風を吹き込んでくれる事を期待していたが…、結局はハリウッド・ブロックバスター色に染められてしまった。
(あのテーマ曲は流れるものの、ハンス・ジマーの音楽降板も残念)
ジョニー・デップが命を吹き込んだジャック・スパロウは、確かに魅力的な屈指の映画キャラだ。
でもこれ以降ジョニデはおちゃらけ道化役が続き、果たしてジョニデにとってジャック・スパロウは世界的人気の名声(と富)を手に入れた福の神か、マンネリズムに陥った厄の神か。
勿論、ジャックの魅力は存分に堪能出来る。今回“キャプテン・ジャック・スパロウ”誕生の瞬間も明かされ、そのシーンはカッコイイ。
夏のハリウッド大作として劇場大スクリーンで観るに相応しいし、ジョニデ=ジャックのファンや「パイレーツ~」ファン、エンタメ映画が好きな方には今回も満足出来るだろう。
でも…
封切られたばかりの話題の最新作に辛口を言うのも恐縮だが、
全米での不振。盛り上がりもかつてほどではなく、絶大な人気を誇った日本でもこれまでの半分の成績に終わるだろう(興行50億前後と予想)。
何だかシリーズはまだアイデアあるらしいが、一応今回大団円として丸く治まった感はあるし、何より序盤の落ちぶれたジャックの姿が示唆している。
本当に“最後の海賊”になりそう。
最後に、せめてもの良かった点を。
何と言っても、バルボッサ!
今回、彼の意外な展開や素晴らしい見せ場が設けられている。
やはりバルボッサこそ、“シリーズ最高の敵”に相応しい。