劇場公開日 2014年7月5日

  • 予告編を見る

「真説『眠れる森の美女』」マレフィセント ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0真説『眠れる森の美女』

2014年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

萌える

これ、痺れますねぇ。現代ディズニーが往年の名作ディズニーに喧嘩売ってますもの。王道を真っ向から否定しちゃうっていう快挙?暴挙?ですから。だって!全否定じゃないですか。『眠れる森の美女』をオリジナルから実写に置き換えてみました、だけでは済まないでしょ。ちょっと解釈変えてみました、と言うには大胆過ぎるというか。続編とも別視点とも違うでしょ。真逆ですもの。善悪が真逆。そもそもオリジナル自体が嘘っぱちだったんだよ、的な描き方ですから。

つまりは人間側に都合の良い解釈で紡がれた物語がオリジナル版『眠れる森の美女』であり、真実を知るマレフィセント側、オーロラ姫の側で紡がれた物語が『マレフィセント』なんですね。そこが面白いんですよ。

だから『マレフィセント』のマレフィセント側に立った場合、語られる景色がオリジナルとは全く違ってくる。オリジナルだとマレフィセントは得体の知れない、如何にもな地獄の魔女としてオーロラ姫誕生の宴に登場してきて、一方的に禍々しい「呪い」を振り撒くんですけども。でも、ここのシーンて、実際にオリジナルを観た方は「なんで?」てなりませんでした?何ていうか、強い動機がないでしょ。オーロラ姫を呪うハッキリとした理由がないというか。イキナリ現れてイキナリ呪うってアンタ。宴に招かれてない!て怒りのみで呪うって、そりゃ動機にだいぶ無理がねえか?と。
で、今回はそこに明確な理由を付けたんですよね。すると、新しい真実が浮かび上がってくるという。マレフィセント、別に完全なる「悪」じゃなくね?となる。かといって「呪い」は掛ける訳だから「善」とも言い難し。非常に人間臭いキャラクターに刷新されてるんですよ。
それと、オリジナル版でお馴染みの心優しき三人組の妖精。これも『マレフィセント』になると解釈が面白いんですよ。わざわざ売らなくてもいい媚びを人間達にわざわざ売って、赤ん坊のオーロラ姫を引き取った後も子育てがネグレクト気味っていう。ただただ引っ掻き廻してるだけの役立たずなトリックスターの役回りにしちゃってるというか。

そういう、『眠れる森の美女』に寄り添いながらもオリジナルとは似て非なる、全く違うストーリーに書き換えちゃったんですよ。それによって製作者の想像の羽も広がって行ったんでしょうね。ファンタジー描写が破格の美しさですから。妖精の国という別世界を作り上げちゃってね。その風景に映えるマレフィセントことアンジェリーナ・ジョリーもその美貌を発揮しとりますから。オーロラ姫を演じるエル・ファニングちゃんもひたすら無邪気でひたすら可愛い。新解釈によって狂気の王になっちゃった国王ステファンを『第9地区』のヴィカス君ことシャルト・コプリーが演じてるのも興味深いです。

そして、オリジナルでも物語のコアとなる「真実の愛のキス」。ここもね、大きく解釈が変わる訳ですよ。現代的な方向性というか。つまりは『アナと雪の女王』から続いてる「愛」の在り方というか、男女間のみを指していないんですね。様々な「愛」のカタチへと解釈が変わったんだなあ、と。

なるほど、ディズニー。これが「真実の愛」の新機軸ですか。

ロロ・トマシ