「最初にキャラクター選択を間違えて始めてしまったゲーム」シュガー・ラッシュ ヒロさんの映画レビュー(感想・評価)
最初にキャラクター選択を間違えて始めてしまったゲーム
脚本はめちゃくちゃ上手いと思った。が、上手すぎて主人公・ラルフの成長を展開させ過ぎてしまったと思う。最初のラルフの目的とは別の所でラルフが成長している。
ラルフは酷いやつでは無くて自分の仕事に疑問を持っている男、転職したいなーと思っている男。
だから自分の尊敬のためにメダルを取りに行くというよりはヒーローになってみたい、という理由で他のゲームに行ってみる、とした方が納得する。
ヴェネロペもプログラムのバグかと思いきや実はプリンセス、というよりバグだけど隠しコマンドを入力すると出現するレアキャラとした方がしっくり来る。(その隠しコマンドを入力するのはあのメガネの女の子)
あのお菓子の国が独裁主義国家の暗喩とするならばバグであるヴェネロペを出現させてレースで勝つと国が崩壊して彼女が新しい女王になるとするとどうだろうか。
あと、これは根本の問題だがヴェネロペに魅力がない。これは見た目なのか振る舞いなのか分からないが応援したくならなかった。
ラルフもヴェネロペも不遇な立場に居る2人だ。なのでヴェネロペがバグからプリンセスに変わって、つまり立場が変わって問題が解決してしまうのは違う気がする。
バグがバグとして存在していい、と言うふうにした方が「自分の今の立場の素晴らしさに気づき、自分を認められる」というテーマがより明確に伝わりやすくなると思う。
おそらくだが、試写会の批評やプロデューサーの指摘によって当初予定していた話から手を加えたのでは無いか。(例えば、あのメガネの女の子が完全に物語の中で宙に浮いてしまっている。本来は何か別の動きをさせるつもりだったのではないか)その結果、筋がブレてしまっている印象。
主人公達より脇役の魅力が素晴らしい作品だった。やっぱりフィックスと軍曹(笑)。彼らが魅力的すぎた。あの2人の冒険譚だったら、面白かっただろうなー、と思う。
フィックスはいい奴だ。自分が死ぬかもしれないのにラルフを探しに来た。友達として悪役の仕事人としてラルフをちゃんと認めている。
それに軍曹もウィルスを自分のゲームの外に出すわけには行かない、という信念のもと動いている。彼らは最初から自分の信念がしっかりとあるキャラクターなので物語の中で変化させずらいと思う。だが、彼らの信念と比べるとラルフの動機が幼稚に見えてしまい、結果としてラルフの魅力を下げてしまっていると思う。
フィックスと軍曹が魅力的だったので彼らが主人公ならば面白かったかなーと思った。ゲームの最初にキャラクター選択を間違えて始めてしまったゲームという印象です。