「映像だけは良いが」009 RE:CYBORG ネモ艦長さんの映画レビュー(感想・評価)
映像だけは良いが
子供の頃からの「サイボーグ009」ファンで、「攻殻機動隊」シリーズも大好きなので、大いに期待して見に行きましたが、神山監督、良いんですかこんな作品公開してしまって?
映像は綺麗です。島村ジョーは格好いいし、フランソワーズ・アルヌールも、少なくとも前半は魅力的。特に前半でのフランソワーズの衣装の描写は凝っています。
でも、ストーリーが駄目。
あれだけハリウッド映画に影響を与えた日本アニメなのに、このRE:CYBORGは逆にハリウッド映画の安易なパクリが満載です。主人公がケーブルを手にビルからダイブして、落ちてくるヒロインを助ける場面とか、ガラス張りのビルに中央から衝撃波が走って、一瞬後にガラスが一気に破片になる描写は、「マトリックス」そのままですし、冒頭近くでジェロニモがジョーに殴りかかる場面で、雨粒を拳が貫いていく描写は「マトリックス・リボリューションズ」そのもの。これ、パロディじゃなくてオマージュの積もりでしょうか?ミサイル潜水艦の描写は「レッド・オクトーバーを追え」や「クリムゾンタイド」の一場面を見るようですし、艦内で艦長が副長に銃を向けてミサイル発射指令を復唱させたり、指令を受けた発射装置担当士官が躊躇して、周囲の部下が顔を見合わせる場面は、「クリムゾンタイド」そのもの。発射装置担当士官がビゴ・モーテンセンに見えました。ICBMの迎撃に失敗して、弾頭が先に飛んで行ってしまう場面は、まるで「スパイズ・ライク・アス」みたい。ペンタゴンの一辺が爆破で破壊される場面、あんな描写にしてアメリカ人はどう思うでしょうか?砂嵐に霞んだようなドバイの描写も「M:I4」を思い出させました。それに、ハリウッド映画ではありませんが、ギルモア博士は荒巻課長を見ているようです。
前半は思わせぶりな伏線がたくさん張られているようでしたが、それが後半に全く生きていません。「彼の声」って、結局集団的無意識だったんですか?それならどうして「同時多発」になるんでしょう?前半の伏線をアルベルト・ハインリヒの長々とした説明台詞で解決しているようですが、アルベルトってそんなに頭が良かったんでしたっけ?少女のような姿の天使(?)は一体誰?途中から姿を消してしまったグレート・ブリテンとピュンマは、他のメンバーが戦っている間一体どこで何をしていたんですか?大体、それまで何十という連続爆破テロをやって来て、最後がミサイル原潜一隻だけからICBM数発を発射で終わるわけ無いでしょう。軍需産業の社長さんは、一回出てきただけで終わりですか?
息をのむくらい美しいかと期待した画像も、感心したのは前半だけで、後半になると、前半あんなに蠱惑的だったフランソワーズの肢体の描写は平板になり、最後は唯の美少女になっていました。
それでも、「流石神山監督」という画面構成は多かったので、ストーリーを無視して画像だけ見れば、印象には残ります。格好いいとも思えます。でも、前半の伏線が後半で全部肩透かしに遭う脚本と、後半雑になる描写は、「途中で予算無くなっちゃったのかなぁ」と思えました。