「冤罪による精神崩壊が怖い」ドリームハウス REXさんの映画レビュー(感想・評価)
冤罪による精神崩壊が怖い
ウィルの正体にたどりつく中盤まで、まんまと騙された。
似た系統にジョン・キューザックの【 アイデンティティー】、レオナルド・ディカプリオの【 シャッター アイランド】があるが、これも属するかもしれない。
正体不明のかつての殺人鬼に脅かされる幸せな一家の恐怖の日々…という映画だと思いきや、まさか本当に「ドリームハウス」だったとは。
中盤以降の犯人捜しは登場人物の少なさから大体絞られてしまうので、推理はそれほど要しない。
この映画で恐ろしいと思ったのは、冤罪で一人の人間が精神が崩壊してしまう可能性が大いにあるというところ。
しかもなおかつ夢のマイホームを手に入れて幸せの絶頂にいるときに、最愛の娘と妻を殺された犯人にされてしまったら尚更。自分ではない、ということを誰も信じてくれなかった時に、自分自身を他人にすり替えてしまうという最悪の逃避。他人の目には「罪の重さで現実逃避した夫」としか映らないだろう。
自分自身をも騙しているのだから、誰が真実を追及してくれるというのか。
真犯人が発覚した際のたたみかけるようなフラッシュバックが若干わかりずらいものの、前半を振り返ると不明な点はない。
共犯者が家を取り違えてしまうのは冒頭の不動産屋で説得力をもたせてあるし、地下室に忍び込んでいた若者たちの逆切れも、警官たちの挙動不審もアンの物言いたげな態度もすべて合点がいく。
妻(幽霊)もあくまでウィルの頭にだけ存在していることが強調され、現実の事象にまったく関与しないことが徹底されている。その辺は抜かりない。
殺人計画をしたジャックの共犯者に対する「子供殺し」という悪態。
殺人計画をしておいてよくもまあお前が言うか、とは思ったが、あくまで委託殺人は「妻」だけなのにウィルの子どもを殺してしまったことから、自分の子どもが殺されていたかもしれないことへの怒りも含まれているのだろう。
殺人の動機に「妻がウィルと不倫していた、または不倫していたことを疑っていた」があったほうが説得力があるような気もしたが、観客によるウィルへの同情心が薄らいでしまうので、これはこれでいいのかもしれない。
しかしナオミ・ワッツのキラキラした目の輝き、美しさはどうだ。彼女に殺意がわくなんて、何があったか知らないが、余程ダメな夫に違いない(笑)