「フランキー堺の居残り佐平次がお見事、南田洋子の遊女や石原裕次郎の高杉晋作も魅力的で、若旦那と駆け落ちする芦川いづみも凛々しい」幕末太陽傳 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
フランキー堺の居残り佐平次がお見事、南田洋子の遊女や石原裕次郎の高杉晋作も魅力的で、若旦那と駆け落ちする芦川いづみも凛々しい
川島雄三 監督による1957年製作の日本映画。配給:日活、日本初公開:1957年7月14日。
著名ながら川島雄三監督の作品は初めての視聴。前半はテンポのせいか少々退屈であったが、後半から俄然に面白くなって驚かされた。自分はあまり見たことが無いタイプの喜劇映画だった。
幕末の文久2年(1862年、明治維新の6年前)品川の遊郭が舞台。主役の人物像は、古典落語の「居残り佐平次」をベースにしている様だが、フランキー堺が肺病持ちながら賢さと狡さと人情味で成功していく主人公を演じいて、ビックリするくらいお見事。獅子奮迅の活躍をする肺病持ちの主人公は、多くの作品を監督しながら筋萎縮性側索硬化症であった川島雄三自身の反映なのだろうか?
売れっ子遊女同士(南田洋子 vs 左幸子)のライバル争いや、男たちを手玉に取って稼ぎまくるこはる(南田)の調子の良さが何とも心地良い。彼女が小悪魔的なこんな素敵な役を演じてたとは知らなかった。
父親の借金の為女郎にされかかる芦川いづみの若旦那(梅野泰靖)との駆け落ちエピソードも、2人が牢獄に閉じ込められる意外性もあって上手い脚本。宮崎駿がファンで、ジブリのヒロイン像を体現するという芦川いづみの凛々しさも新鮮であった。
石原裕次郎による高杉晋作らによる英国公使館焼き討ち事件を絡めたのも秀逸。傑物演ずる裕次郎と知恵者フランキー堺の船上での駆け引きが、実に面白かった。
あと、坂玄瑞役で小林旭、志道聞多(井上馨)役で二谷英明、更に岡田真澄、西村晃、小沢昭一、金子信雄、菅井きん、山岡久乃も登場する。
監督川島雄三、脚本川島雄三 、田中啓一(山内久の変名)、 今村昌平、撮影高村倉太郎、照明大西美津男、美術中村公彦 、千葉一彦、録音橋本文雄、編集中村正、音楽黛敏郎、助監督
今村昌平、製作主任林本博佳。
出演フランキー堺:居残り佐平次、南田洋子:女郎こはる、左幸子:女郎おそめ、石原裕次郎:高杉晋作、芦川いづみ:女中おひさ、金子信雄:相模屋楼主伝兵衛、織田政雄:番頭善八、岡田眞澄:若衆喜助、植村謙二郎:大工長兵衛、河野秋武:鬼島又兵衛、二谷英明:長州藩士志道聞多、西村晃:気病みの新公、高原駿雄:若衆かね、小林旭:久坂玄瑞、武藤章生:大和弥八郎、小沢昭一:貸本屋金造、梅野泰靖:息子徳三郎、新井麗子:女郎おもよ、菅井きん:やり手おくま、山岡久乃:女房お辰、殿山泰司:仏壇屋倉造、市村俊幸:杢兵衛大盡。