「1974年版に比べると学芸会…」華麗なるギャツビー もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
1974年版に比べると学芸会…
①Roaring Twentiesの狂乱を再現した(つもりの)セットや美術が如何にも作り物めいてリアリティーがない。その舞台装置の中で子供っぽい役者が芝居してる感じ。②とにかく長い!が、トビー・マクワイアの独白(説明)が延々と続くのが長く感じた要因だし、映画の語り方として失敗だと思う。映画というのは映像で語っていくものだから。③観た歳にも依るのかも知れないが、役者がいかにも子供っぽい。キャリー・マリガンは確かに可愛いが、ギャツビーが男の純情を一途に捧げるほどの魅力(たとえ上っ面だけとしても)があるとは思えない。また、外見の美しさとは裏腹な内面の薄っぺらさも充分に表現できていない点でも、1974年版のミア・ファローには及ばない。マートル役の女優自身に存在感がないのに加え、脚本が悪いのかも知れないが、マートルという女の持つ愚かさや哀れさが全く描かれていない。これも1974年版のカレン・ブラックとは比べ物にならない。トビー・マクワイアの陰気な顔を見せられるのも辛気臭い。レオナルド・ディカプリオが見直すくらい男前(顔の全パーツがやや真ん中寄りだが)に撮られているし、細かい顔の表情など演技的には1974版のロバート・レッドフォードに負けていないと思うが、時々かいまみえる現代性がギャツビーという男への共感を妨げる。④『The Great Gatsby』(greatを「華麗なる」と訳すのは原作のニュアンスからは少し離れると思う)という原作は、ギャツビーという成り上がりの青年(デイジーを取り戻したいという一念で成り上がったわけだが)が(その純情に値しない)デイジーという女との結局幻でしかなかった愛を求め続けた末に裏切られ(女にも社会にも)破滅していく姿に、伝統は無いが世界一富んだ国に成り上がった20年代のアメリカを重ね合わせて、アメリカ文化の、資本主義の拝金主義を風刺・批判した小説である。⑤1974年版も実は原作のこの点を描き切れてはいない。そして今作もやはりその点は同じでメロドラマの域を出ていない。