ニーチェの馬のレビュー・感想・評価
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"palinka"
老いた父親と年頃も過ぎたであろう娘、そんな二人の生活を描く六日間は静かでありながら不穏な空気と雰囲気が付き纏う、無惨に思える毛並みもボロボロな馬、食事は茹でて蒸されたジャガイモをそれぞれ一個ずつ、それを毎日食す、おそらくは一日一食のジャガイモ、娘は慣れた手付きで熱がらず、父親は熱さに耐えられない模様、必要最低限の生活用品や道具はある筈なのに素手で食べるジャガイモ、そんな貴重な食料を完食することは一度もなく。 ワンカット長回しとまでは言わないが、静止画のように映る映像が全て絵画のように思える美しさがある中に混沌としたディストピア表現があるようにも、違うか?? 何も起こらない日常の生活を描いているようで起こる出来事は唐突に、地味に進む物語自体に展開があるようで無いような、そんな世界観に飽きる事はなく最後まで魅入ってしまう。
ジャガイモと馬
人間がなぜ「神」を創造したのか? 神や魂を信じるようになったのか? 生きるとは?命とは何? そのような混沌を感じながら、登場する二人の暮らしの繰り返しを僕は見ることになった。 新藤兼人の無声映画「裸の島」を思い出したが、異なる点は、この映画にはナレーションと多少の会話がある。そして二人は感情を控えている。映画を見終わると、5日間どうのよりも5日間以外の始まりと終わりが気になってくる。そして二人が血縁関係なのかどうなのか? 馬は死んだのかどうなのか?と考えているうちに時間切れとなり、バッサリ切られてしまう。 つまり僕は二人に相手にされず、二人について何も知らずに5日間お世話になったような、そんな気がしていたが、まてよ、実際は僕が死んでしまったのではないか? 「はい、あんたの一生はそこまで」とされてしまったような、妙な感じをおぼえたのであった。
ある意味、映画の究極
映画でしか作れない世界観。
ほとんどセリフもなく、映像・音楽・撮影技術だけでメッセージを伝え、無限の意味を視聴者に訴えかける。
一つ一つのシーンがまるで名画のような陰影な美しさがある。
物質的に豊かな現代では重ねることが難しいかも知れないが、この6日間は、実は「人生」の本質なのかもしれない。
世の果て感
過去のお話なのに未来の物語にも見える不思議。文学的でも幻想的ということでもないように映った。 退屈であること自体が何かの表現、何かの祈りと思いたい。淡々として干からびまくった日常の繰り返しは、ああまたこのシーン、みたことあるゾ、「恋はデジャブ」なんて言ってる場合じゃない。 別に人間の業や神に悖る悪事が描かれているわけでもないのに、冷え冷えとした絶望というか、陰気の極み。つらい。
今まで出会ったことの無い映画
正直すべて見終わるまで3日かかった。見ようと思って腰を据えても気付いたら寝てしまっていた。でも、それでも見たい!と思わせる不思議な引力がある映画。いやむしろ見なきゃいけないような気にさえなっていた。
ただ、すべて見終わって、色んな方のレビューをみて、自分は凄い映画を見たのだと身震いがした。
これほどの映画があったのだろうか。これまでのストーリーや役者ありきだった映画観が覆さるような体験。
淡々と繰り返される日常。残酷と思えるほどの。しかし、それでも人は生きていく。笑顔も娯楽も、思想や観念、生きがいすらない、ただ生きていくための無駄を一切ない剥ぎ取られたルーティンワーク。しかしそこに生を肯定し力強く生きる人の姿をみる。
ここまで無駄なくかつ強烈に人の生き様を描いた映画はないのではないか。
これまで起きてこなかった思わぬことが起き、少しずつ一刻一刻終わりが近づいていく。しかし、そこには静寂と、絶望の中にかすかにでも次に命を繋ごうとする底力がある。
生きようとする人間はほんとうに強いことを、この映画で見させられる。
何も飾らず、何も見せない。ただ流れる人生の一片を静かに見守っているだけだが、しかしこれほどまでに深く心に遺す、まさに名作。
映画館で見たかった、名作!
DVDで視聴したためこの評価。 これは映画館で体験するべき作品だったと思います。 永遠に繰り返されるかのような日常。 鳴り続けている風の音が不安感と虚無感をかき立てます。 間口が狭いので、誰にでも好かれる映画ではないと思います。 ハマる人はハマる映画。
邦題が秀逸。
邦題が秀逸。原題は、A Torinoi lo。繰り返される日常をパンフォーカスで映し出される画像は圧巻。状況は刻一刻と悪くなって行き、
絶望的な状況提示は哲学的。「それでも食べていかねばならない。」主人公の台詞がぼくらの日常とオウヴアーラップする。
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