「格闘技映画として「上がる」要素を全部乗せした感のある一作」ウォーリアー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0格闘技映画として「上がる」要素を全部乗せした感のある一作

2024年10月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

2011年初公開の本作、興行的な事情によるものなのか、その後幾度か特別上映という形で劇場公開を行って来ています。そのため2024年時点での鑑賞で、総合格闘技を題材に扱う時代的な必然性を感じにくいのは確かなのですが、家族の葛藤、戦う者たちが背負うもの、そしてもちろん試合場面の迫真性など、格闘技映画として「上がる」要素をふんだんに詰め込んだ物語の展開は定石を外すことがなく、今観ても十分エキサイトして鑑賞できる作品に仕上がっています。

本作が描いた、子供を世界チャンピオンに育てるという執念に取りつかれた父親像は、『アイアンクロー』(2023)にも通じるところがあるのですが、本作においてはやや同情的な視点で描いている(さらにその過去を物語として清算しているとは言いにくい)ところに時代の変化を感じました。

トム・ハーディは『マッドマックス怒りのデスロード』(2015)のさらに前の作品ということで、筋骨隆々の身体は確かに若々しいのですが、彼の背負っている過去の重さからか、常にある種の厭世感、粗暴さを漂わせていて、そこに実にハーディらしさが備わっていました。

制作当時ですでに格闘技映画の主人公としては年齢を重ねている(そしてやや柔和さが際立つ)感のあったジョエル・エルガートンですが、だからこそ元格闘家の高校教師、という役柄に強い説得力を与えていました。この二人の迫真の身体作りと訓練で、格闘場面に十分な迫力が加わっている点は特筆すべきところ。

とにかく父子、兄弟の関係を描いた物語となると、因縁の対決に回収しがちだなー、ということも強く実感した次第!

yui