「ベッドの下の閉じた表現」ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 鯨さんの映画レビュー(感想・評価)
ベッドの下の閉じた表現
9.11で父を亡くしたオスカーは、その事実を受け止められないまま日々を過ごし、
クローゼットで"ブラック"と書かれた封筒に入った鍵を見つける。
普通と少し違う、"不確定"のオスカーは
父と探検と称して様々な事柄を研究したり、調査したりしていて、
この鍵は父の最後の探検だ!と、どこを開く鍵なのか調査し始める。
どこの鍵なのかわかるまでの調査は、果てしなく長く、膨大で途方も無い。
でも、まるでそれをしている間は、父親がどこかにいて、死んでいないと思い込んでいるようにも映るオスカーが、健気で、切なくて哀しい。
この鍵でどこかを開けられたら、父親が帰ってくる、と思っているような切実さがある。
事実、父親の棺には遺体はなく、空っぽの箱を埋葬したのだから、実感はなくて当然だと思う。
父親が死んだことはわかっていて、でもそれをどこか認めきれなくて、納得できない・したくないと思っている。
途方もないブラックに1人ずつ会いに行く中、人と関わるのが苦手なオスカーは、タンバリンを鳴らし、父と作った名刺を差し出し、一つ一つ進んでいく。
最初は断片的だったものが、ラストが近づくにつれて集まってきて、胸に押し寄せてくる。
留守電の意味、間借り人のこと、母からの愛…
父親役のトムハンクスの、断片的な思い出のシーンで、どれだけ息子や妻を愛しているかがものすごく伝わってきた。
特にベッドの下のオスカーが、
言葉ではうまく表せないオスカーの不器用さや、閉じている世界観を表している。
出て行った後戻ってきて、ドアの隙間からささやく言葉も。
留守電の意味を知った時、それまで誰にもいえなかった理由がわかり、涙が止まらなかった。
邦題がイマイチだなぁとは思うけれど、文句なしの感動作と言える。