ファミリー・ツリーのレビュー・感想・評価
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ハワイの風
この話が、アメリカの本土のどこかの街だったら、嘘くさくて観ていられなかったかも。
「サイドウェイ」がそうだったんですよね。
知的な「気取り」や、ヤッピーぽい「皮肉」がね、どうもこの。。。
しかし、ハワイには生暖か~い風が強くなったり弱くなったりで、
いつも吹いているんですよね。
そこに、ハワイのスラックキー・ギターのあのサウンドが流れてくると、
気持ちのトゲが取れちゃうんですよ。
ハワイのメロディを乗せた風が、この映画の主人公たちが慈悲の心を示すのに、嘘くささやトゲをとって、映画全体をうまく包んだのかも知れない。
生暖かい風とスラックキー・ギターのハワイのオーラがこの映画を、ある種の傑作にしたのかもしれない。。。
子役の方が…。
子どもに必要以上の金を与えるな
ジョージ・クルーニーならではの、「赦しの物語」
赦しの物語だと思う。
妻の浮気を、彼女の昏睡状態に陥ったあとにしった、夫の気持ち
母親のそれを知っていて、父親に隠し続けていた娘の気持ち
そのような状況に接したときのひとの気持ちと
それが次第に和らいで、お互いの気持を理解し
和解するまでをユーモアを込めて、描いていく。
そこにあまり外国の話、という雰囲気が感じられないのは
ハワイという舞台設定があるからだろう。
論語には、隠すことを受け入れる、
という意味の説話があるらしい
父親は子供に間違いがあった場合でも、
子供をかばってそれを隠すし
子どもはぎゃくに、たとえ父親に失態があった場合でも
それを隠す
親子がおたがいにかばいあい
助け合うといった行為こそが
親子のあいだにおける
情愛の素直な表現であろうことを
教えたものである
論語では、父親と子どもの関係だが
この映画はそれを、アメリカ的な解釈で
親子だけでなく、夫婦、人間関係において
表現したものといえなくもない
ジョージ・クルーニーはアクションものより
こういった飄々としたキャラのほうが断然、際立つ
この作品は、そういったクルーニーだからこそ
成立した物語。
彼自身は、ちょっと違うかもしれないが
今風の「ジェームス・スチュアート」ともいえるだろうか
健気な父親の涙。
仕事一筋のお父さん方にとって、かなり頭の痛くなる物語だ。
家族の為に身を粉にして(よくいう台詞)働いた結果がコレとは。
だから奥さんに家を任せきり…なんていうのはダメなんだよ、と
鑑賞者だとアッサリ言えるんだけど^^;本人には辛い一撃になる。
楽園(だと思われがちの)ハワイで、サーフィンなんて何十年も
やってねぇよと冒頭から文句を垂れる弁護士のマット・キング。
そんなことより今の彼には、難題が二つも圧し掛かっている。
先祖代々の広大な一等地を売却するか否かに頭を悩ませる中、
妻がボート事故で昏睡状態に陥ってしまい助かる見込みはない。
ついてはその妻の生命維持装置をいつ外すか、
二人の娘に(特に下の娘)それをどう説明するか、ということだ。
更にそれに加え、なんと妻が浮気していたというではないか!
えーっ!なに、しかもそれを知らなかったのはオレだけ!?って
いう、急転直下の困難を右往左往でオロオロ走り回るクルーニー…
可哀想なんだけど、これがまた抜群に巧い!(涙が出るほど)
映画的とかドラマ的というよりも、実際に起こりそうな事件を
淡々と掘り下げながらググーッと人間の深い部分をえぐり出す
巧い演出だと思うし、それに堅く応える彼と娘たちがまた健気。
妻が浮気した理由は…定かではないが、忙しい夫より愛人へと
気持ちが傾いてしまったのだろう。ところが相手はそうじゃない。
こんな告白を聞いて、もし実際に彼の立場だったらどうだろう。
ぶん殴るくらいじゃ気が済まない、それこそ血で血を洗う抗争劇
(あー飛躍しちゃった^^;)になっても不思議ではないこの展開に、
彼はなんとも冷静な「お願い」をする。まぁそれが後で効くんだけど…
愛するものを奪われるのは辛い。
結婚相手であろうと、土地であろうと、大切なモノは、
自分がそれをどう扱うかでその価値さえも変わってくるものだ。
何が正しくて何が間違っている、という物差しだけでは測れない、
難解で辛い決断をしてそれを乗り越えた先には、だからどうか、
せめて心安らぐ家なり家族なりがいて欲しい…ものだと思う。
彼が苦しんだこの月日を、ラストの団らんが温かく包みこむ。
娘達にこの父親は、どんなふうに映っただろうか。
私なら(過去はどうあれ)胸を張って、私の誇りと言ってあげたい。
時に滑稽で時にシリアスな表情を見せるクルーニーは素晴らしい。
結婚するのか分からないけど^^;いい父親になれそうな感じねぇ。
(シド役のN・クラウスはいいわ~。存在価値のないところも最高v)
期待が大きすぎたかも。
やわらかいユーモアに包まれて。
マットは、ハワイに住む弁護士。
それを聞いただけで、裕福で、何一つ不自由のない楽園的生活を送っているのだろうな~と私などは想像する。
そんな彼に起こる妻の突然の事故。
妻は昏睡状態に陥ってしまう。
仕事を口実に、面倒なこと一切を妻に押し付けてきたマットは、困り果てる。
私はここで、私の夫もそうなるだろうな~と、感慨深く思ってしまう。
折しも、先祖から受け継いだ土地の売却話や、それに関わる大勢の親戚達の利害。
妻の不倫疑惑。
高校生の長女と10歳の次女とは、今まできちんと関わり合ってこなかった代償で、彼女達は反抗的である。
ぎこちないやり取りで、なんとか関係修復を試みるが・・・。
表向きの立派な顔とは裏腹な、自信喪失の内面との、ギャップがとても良い。
ジョージ・クルーニーが、とても良い。
妻の両親、特に父親、長女がつれてくるヘンなボーイフレンド、従兄弟たち、友人たち。
そんな登場人物が、一癖あり、二癖あり、話を楽しく盛り上げてくれる。
ハワイの美しい海、山、自然。
でも、人間はどこに居ても、普通に悩んでいるんだな。
悩んで、悩んで、転んでも、立ち上がって、人間って捨てたものじゃないよね。
ラストの、キルトから覗く足の裏がとても良い。
哀しみを乗り越える家族はストロベリー&モカチップアイスの様に苦くて甘酸っぱく複雑な愛情の味がする
今年のゴールデングローブ賞で作品賞や、アカデミー賞でも脚色賞を受賞するのも頷ける、とっても心温まるお話しで、大きな感動がドンと胸に飛び込んできました!
ストーリーとしては、或る日突然の事故で、家族が重体になるお話は、普通は暗く重い話の筈なのだが、舞台がハワイという土地柄のためか、悲壮感ばかりが前面に出て来ないばかりか、辛い苦渋の選択を迫られる家族のお話でも、決してネガティブでは無く、問題解決へと、家族が一丸となって努力を重ねてゆくお話を観るのは、どんどん気持ちが爽やかになっていくのだ。壊れかけていた家族は、最悪の事故をきっかけにして、逆に家族の再生へと絆を取り戻していく。こんな嬉しい話は近頃あまり見かけない!
しかし、少しばかり、ケチを付けるなら、ファーストシーンでのナレーションが説明セリフ的に長く続いて、これは予告編で観ていたので、予告編の説明用のナレーションだと思っていたが、本篇中の正式なナレーションだと解り少し驚いた・・・それと15年もサーフィンもしないで、仕事一筋で、妻の浮気にも気付かなかったと言う弁護士のマットが仕事を沢山やっている様に見えなかったところが少しだけ残念だ。いつも書類のチェックは欠かさずやっている様だったが、その辺がやたらと気になってしまった。他は文句無く素晴らしかったな!
J・クルーニー演じるマット・キングは妻のエリザベスが突然の事故に遭い、彼女の元気な頃からの希望通りに、コーマから目覚めない時は、生命維持装置は撤去する事を希望していた事から、その決断を家族全員に伝える事になると言う難しい役処である。そこへもってきて、その妻が自分の気付かないところで、浮気をしていた事を、事も有ろうに、
長女から聞かされる羽目になる。踏んだり蹴ったりの、男の面子マル潰れのマットの悲痛な物語は、ここまで来ると笑うしか無いと言う心境になるのではないだろうかと思えるシーンも、多々有り、ちょっと滑稽な場面も上手く演出されていて真実味タップリだ。
家族皆が、エリザベスの為に尊厳死を選ぶ事を受け入れなくてはならない事になる。
家族や親類は気持ちの整理が出来ないままに、最期を見取る選択を嫌でも、早々に迫られるのだが、夫のマット、長女のアレクサンドラ、そして次女のスコッティ、エリザベスの友人達や、実の両親など、皆各々の立場で、同じ一人の家族を失うのであってもその気持ちはみなそれぞれ、複雑に違うものだから、その一人一人の家族の気持ちを家族愛と一言では言い表せない相違点をこの映画は丁寧に紡いでいくそのプロセスが素晴らしいし、その同じ人を失う事で悲しみを分かち合う事で離れていた家族の距離が少しずつ縮まっていくそのプロセスが感動的なのだ!!
人間にとって一番大切なものは、きっと人を許すと言う事だろうし、人ばかりか自分も許すと言うプロセスこそ、人間が生きて行く上で最も要不可欠な愛情と価値観だろうと、この映画を通じて強く感じた。そして、長女の彼氏のシドを家族の様に受け入れる様になるマットも素晴らしい。そしてこの小生意気なシドが実は苦労人だった事が判明するが、これも人を簡単にジャッジしない事の大切さを伝える素晴らしいエピソードだった!!
伴侶への別れの言葉
ハワイアンののんびりした音楽とは裏腹の厳しい毎日。
冷めていたとしても、二度と思いを確かめることができなくなるなんて、つらいことだ。当たり散らす相手もなく、妻はすぐにも逝ってしまう。別れの儀式は、残される人々の為のものだとしみじみ思う。「さよならエリザベス、私の妻、私の友、私の苦痛、私の喜び」伴侶への最期の言葉が胸に残る。
かっこ悪いクルーニーが最高!
映画 「ファミリーツリー」、原題「THE DESCENDANTS」(子孫、末裔)を観た。2007年に出版された、カウイ ハートへミングの小説「THE DESCENDANTS」の映画化。
監督:アレクサンダー ペイン
キャスト
マット キング:ジョージ クルーニー
長女アレックス:シャイレーン ウッドリイ
次女アメラ :アマラ ミラー
ストーリーは
弁護士で、大土地所有者のマット キングは、ハワイのオアフ島で妻と二人の娘達と暮らしていた。代々、受け継がれてきた広大な土地を、大規模リゾート地として開発する計画を持っている。ハワイ島の各地に住む親類、縁者、従兄弟達すべてを巻き込んだ 大規模な開発事業計画だ。
ところが妻のエリザベスが、スピードボートに乗っていて転落し、頭を打ったために、昏睡脳死状態に陥ってしまった。目を覚まさない妻を見守りながら、マット キングは、仕事に熱中していて、妻と会話を何ヶ月も交わしていなかったことを反省する。自分は、家庭を全く顧みていなかった。妻が目を覚ましたら、妻のために今度こそ二人で世界旅行をしたり、妻の望みを何でもかなえてやろう、妻のために生き直そう と心に誓う。
ところがある日、医師から妻は回復する見込みはない、と断言され、自動呼吸装置を切る為のサインを求められて、マットはあわてる。まず、私立高校の寮で生活をしている長女アレックスを、家に呼び戻さなければならない。
マットは、10歳になる次女のアマラと一緒に、アレックスを迎えに行った。父親として、アレックスとまともに話をしたのは どれほど昔のことだったか。むつかしい年頃の娘と共通の会話を持てない父親が、母親の呼吸装置を止める為の同意を 長女に求める。しかし、父親にいらだつアレックスは 腹立ち紛れに 母親が父のことを愛してなどおらず、浮気をしていたと告げる。動転したのはマットだ。
腹を立てるにも 妻の浮気相手が誰か わからない。妻と親しかった友人に問い正し、浮気相手の名前がわかる。しかも、よりにもよって、エリザベスは その男を愛していて離婚をしようとしていたと言うのだ。マットは 大いにあわてふためく。
マットは親類縁者、友人達を招待して妻の呼吸自動装置を切ることを告げる。皆、それぞれエリザベスにお別れを言って 去っていく。妻から機械は取り外された。しかし、しばらくは小康状態が続く。マットは、妻がそんなに愛していたなら、妻の相手の男も、お別れを言いたいのではないかと考える。
相手探しが始まった。
長女アレックスのうろ覚えの記憶をたどって、相手の居所がわかった。彼はマットたちが いま取り掛かろとしていたマットの土地リゾート開発の計画に関わっている不動産業者だった。
ついに突き止めた男の家を訪ねていくと、男は必死で逃げ腰になって弁解する。マットには 男がエリザベスとはパーテイーで出会い 行き掛かりで関係を持ったが 彼には妻も子供達もいることがわかった。エリザベスは、男に妻子があることも知らなかったのだ。
マットに事情がわかってみると いま息を引き取ろうとしている妻に憎しみの感情は消え去り、自分が妻を放っておいたため妻子ある男の夢中になった妻に哀れみを覚える。そして自責の念にかられて妻を抱きしめて、息を引き取る妻を見守る。
妻の灰を海に返した日、親族達にマットは、土地のリゾート開発計画はなかったことにする、しばらくは妻の土地は手をつけずに置く と発表する。妻のことがあって、ふたりの娘達との離れていた間柄を縮めることができた。
マットにそれ以上、何を望むことが出来よう。
というお話。
コメデイータッチの家庭劇。
小品だが ジョージ クルーニーが、とても良くて 心に残る映画になった。主役が、クルーニーでなくて、他の役者がやっていたら全然ちがう映画になっていただろう。映画には、ものすごく悪い奴が一人も出てこない。家庭劇とは、そんなものかもしれない。
ジョージ クルーニーの妻の不実を知らされたときの あわてぶりが良い。人の善良、誠実の代表みたいな男が あわてふためく様子に同情と憐憫が集まる。肩を落としたクルーニーの後姿で、彼は全世界の女性を味方にしてしまった。かっこう悪い役なのに、クルーニーがやるとスマートでかっこうが良い。
音楽が良い。ジョージ クルーニーが間の抜けた夫を演じ、これまた間の抜けたようなウクレレとハワイアンが流れる。美しい海や自然をバックに、のんびりとしたハワイアンミュージックが流れてきて 心が癒される。
家族って。。なんだろう
祖先から引き継いだものの大切さを感じる
小学生の次女の好き嫌いが分からず、高校生の長女とは感情のもつれからまともに会話ができない父親マットの奮闘を描く。
妻の浮気の真相究明と、祖先から受け継いだ広大な土地の売却という2つの筋書きが絡みあう。
妻のプライベートを知る人間はそこらじゅうに住んでいる。
土地の処分については、マットが全権を握っているものの、多くの従兄弟たちの意見を束ねる必要がある。その親戚は、オアフ島だけでなくハワイの島々に散っている。
どこに行っても知人と出くわすハワイという世間は狭いのだと実感する。
何も隠し事ができない、日本の田舎村のようなところだ。
仕事一本だったマットが、妻の事故と土地売却を機に、改めて人との繋がりを深めていく。
とりわけ、二人の娘との距離が縮まっていく過程が、ほどよい距離感を持って描かれる。
家族に金魚の糞のように付いて歩くシドが面白い。長女のボーイフレンドなのだが、口が達者で、人の気持ちを逆なでするいけ好かない少年だ。あまりの言動にキレたマットの「こいつはバカだ!!」に、よくぞ言ったと拍手したくなるぐらい生理的嫌悪を覚えるヤツだ。ところが、こいつがマットと娘や他の人達の間でクッションの働きをしていく。マットや観客のシドを見る目の変化を、ゆるやかに人間関係の修復に活かした脚色が上手い。
感情のスレ違いやもつれがあろうとも、この世に生を賜った証を、人は親から子へ、子から孫へと引き継いでいく。
なにを思っていたのか、その真実が明かされないまま昏睡するマットの妻エリザベス。彼女もまた、次代へ血を残した家系の一員である。二人の娘は彼女が生きた証なのだ。
なるほど予告篇のあのカットはここだったのかと納得するラストシーン。
二人の娘の真ん中で、まだまだ落ち着かずしっくりしない父親の様子が微笑ましい、いいラストだ。
将来、長女がシドと結婚したいと言い出したらマットはどんな顔をするのだろう?
まだまだキング家は前途多難なのだ。そうやって家系は引き継がれていく。
誠実な登場人物
中年男の苦悩を描いているような映画で、そんなのにお金を払うのもいかがなものかと思いながらも見に行ったら、自分にも身近な問題が語られており、非常にのめりこんで見た。
妻の浮気相手がどんな嫌な人間だろうと思っていると普通の家庭を愛する気のいいおじさんで、拍子抜けした。しかも彼は何でもペラペラしゃべる正直者だった。その上、彼の奥さんが非常に魅力的な上出来な人物だった。問題から目をそらすことなく、正面から向き合おうという姿勢が大変素晴らしく感動的だったんだけど、現実はそこまで上出来な人物ばかりじゃないだろうと思った。
また、実際彼らはハワイの王族の家系で超大金持ち、主人公は弁護士でもあり、ガンを患っていると冒頭で語っていた割りにジョギングまでして健康体にしか見えなかった。そんな暮らしをしていて苦悩とはちゃんちゃらおかしいと思わなくもなかった。
悩んで悩んで…… 受け継ぐって大変
辛口な人間賛歌
友達とふと思い立ち、レイトショーで見てきました。
私は、結構レビューとか見る人なので、この映画も単なる感動ものではないと思って見に行ったけど、予想以上にヘビーでびっくり。
内容のヘビーさとハワイの風景の穏やかさがなんともアンバランス。
風景に感動はしても、描かれる人間関係のドロドロさに対する緊張感が勝って結局はそれどころじゃないみたいになります。
そんなヘビーな内容の中でほっとするのは、子供たちの純粋さ。
そしてジョージクルーニー演じるマット・キングのいい人っぷり。
17歳のアレクサンドラの女優さんは素晴らしく瑞々しい。思春期の潔癖さ、母親を失うことへの不安や悲しみ、そんな中でも妹、友人、父親を思いやる優しさが混在し、とてもリアルな存在感です。
妹のスコッティはちょっと生意気な小学生を完全に好演。あのおおらかな感じの体型からしてハワイの子っぽい。存在自体が最高に愛らしくて、ずっと目で追ってしまいます。
そして、マット・キングがほんとにキチンとした人なんだよね。仕事でも、家族でも、対人関係でも、正しくあろうとする人で、すごく好感が持てます。
そういう人が妻の裏切りを知り、妻の死と直面し、ちょっとうろたえた姿を見せても誰も責められない。
そして、今まであまり向き合ってこれなかった子供たちと向き合うことで、自分のルーツを次の世代に伝えることの大切さに気づいたり。
ある程度いろいろな経験をしてきた大人の男性が、苦い経験を乗り越え、人生の深みを増す姿をそっと見守ることになる映画だと思う。
人生の節目節目で感じることは人それぞれ。それを生かすも殺すもその人次第。マット・キングという人は自分に降りかかった出来事から逃げず、目をそらさずに真正面から受け止め、自分らしい答えを出していく。
それはすごく勇気がいることで、それを成し遂げる人を主役に据えているあたり、ドロドロな人間関係を描いても、やっぱりこの映画は人間賛歌だと思うのです。
男のみっともなさを真正面から描ける監督!
「アバウト・シュミット」では定年退職した父親を、「サイドウェイ」では今一歩踏み出せない中年男を描いてきたアレクサンダー・ペイン監督が、今度は妻に不倫された父親を描いてみせた。おろおろして、どうしていいかわからない、かっこ悪いおとうさんだ。それをハリウッドの伊達男ジョージ・クルーニーが演じているところがおもしろい。残念ながら、アカデミー賞は逃したが、こんな父親役を演じる年になったのかとしみじみ思った。前2作はロード・ムービーだったので、今作もそうなのかなと思ったら、ロード部分は少なくて、娘二人との格闘の部分が多かった。どの作品も観ている間は「あ~ぁ、しょうもないなぁ」と思うのに、観終わった後は時間が経つにつれ、どんどん心に沁みこんでくるのが不思議だ。「仕方ないよな」とか「そういう事もある」と思えてきて、監督の主人公に対する暖かい気持ちがスクリーンのこちら側にも伝わってくるからだ。そう、監督の作品は後から効いてくる。私が特に気に入ったシーンは3か所ある。マットが妻が不倫していたことを知って、友だちの家に駆け込むシーン。動揺が伝わってきた。昏睡状態の妻に文句を言うシーン。言わずにはいられない気持ちがわかった。3人でビデオを観ているシーンだ。再生された家族がそこにあった。よかったと思った。この映画も後から来そうだ。
家族再生物語
第69回ゴールデングローブ賞で作品賞 (ドラマ部門)と主演男優賞 (ドラマ部門)を受賞。第84回アカデミー賞では、作品賞・主演男優賞・監督賞・編集賞にノミネート、脚色賞を受賞。
何か、物凄くドラマがあって、急転直下と言う物語では無いですが、バラバラになっていた一つの家族が、困難を経て(たぶん)まとまって行くという話が、非常に共感を覚えます。
いつもダンディーで、カッコ良い役のジョージ・クルーニーが、ちょっと情けなく、カッコ悪いお父さんを演じています。でもそれが、生活感あふれる、魅力的な人物になっています。それが、なんか良い。結局のところ、イケメンはイケメンで、ダンディーはダンディーですね(笑)。
よく分からないのが、シドの位置づけ。娘のアレクサンドラが大人になりつつあると言うところを示す目的なのかもしれませんが、ずーっと一緒に行動する必要はあるんですかね?最初に出て、アレクサンドラにも彼氏が居るんだと言う事を示しただけでも良いのではないかと思いましたが・・・?
原題の『The Descendants』は、“子孫”と言う意味。そういう意味では、邦題の『ファミリー・ツリー』もニュアンスを近づけて付けたものと思いますが、示している所は違うのかな。原題の『The Descendants』だと、先祖代々土地を受け継いできて、そして、それがのちの子孫たちにも受け継がれていく。それが、ハワイでどういう意味を持つのか、日本人の私にはわかりませんが、物語の最後のマットの決断を見る限り、何か重い意味を持つんでしょうね。
一つの家族の再生の物語。中々、いい映画でした。
本当の楽園は…
広い空、青い海、木々の緑…
美しいハワイに暮らす主人公マット・キングは先祖から受け継いだ広大な原野を預かり、プール付きの邸宅に住み、預金には手を着けずに弁護士をして生計を立てる。なんとも羨ましく思えるこの男の家庭がこの映画の舞台である。そしてハワイ暮らしでカメハメハ大王の血を引く子孫というところがミソだ。
事故により意識が戻らない妻を前に、今まで仕事ばかりで妻と向き合ってこなかった自分を悔いる。開いてしまった娘たちとの距離に悩み、妻の浮気が発覚し、しかも知らなかったのは自分だけだったという事態に傷つく。
妻の尊厳死をきっかけに家族の絆を取り戻すという皮肉…
預かっている原野をどう処理するべきか悩む。
きっと当事者にとってみれば、ハワイの海や木々の美しさなど関係ないのだ。そんなものは楽園でも何でもないのだろう。この映画に出てくるハワイは決して美しいものばかりではない。汚れたプールの水や黒い雲を見せている。
どこに暮らそうと人生はラクではないのだ。
しかしそんな人生を少しでも軽くするかのように流れるハワイアンミュージック…
マット・キングにとっては楽園ではなくとも子供たちのために何を伝え、何を残すのか…
冒頭、マット・キングは「ハワイの生活は皆が思うような楽園ではない」と嘆いた。そのラストシーンで、マット・キングは本当の楽園を見つけたのではないだろうか?
苦しみ悩みながら子孫に受け継がれていくものを…
ずっと家族でいよう。
「ハワイ暮らしというだけで、あなた方はそんなに気楽な生活だと思うのか?」
的な、冒頭に主人公がそんな問い掛けモノローグを始めます。
どこで暮らそうと人生の辛辣さは大差ないぜ?て感じの。
そのモノローグ後、まあ、こっちもそれを覚悟して本腰観賞に臨む訳です。
んで、印象はなんつーか、まあ「ハワイ暮らしも気楽じゃない」かもしれないけども?
それでもハワイに救われてるな。
ハワイの情景に癒されてるな。
なかなかにヘビーな状況が、ハワイで少しソフトになってるな。
何故か全編、どことなくユーモラスだぞ。
ハワイ暮らし、羨ましいぜ?という。
そうなんですよね。
主人公達の身の回りで起こっている重ったい出来事が、ハワイ演出でかなり軽やかに表現されてる。
舞台がハワイであるが故の?弊害(というと語弊があるけど)。
壮大でのどかな自然風景ってのはね、もう卑怯ですよ。
それだけで癒し。
それに音楽。
どんな切迫したシーンでも、ハワイアンミュージック、ウクレレののどかな調べをチョイスするもんだから、どのシークエンスも重苦しさに寄らない。
ガハハハ!と笑う陽気さは内在しないけど、深刻に偏らない絶妙なライト感。
クスリと行くかどうかの、微妙なラインのユーモア。
じわじわ来る温かさ、切なさ、優しさ。
これは近年稀に見る傑作なのかもしれないぞ?そんなこと感じながら、余韻の残るラストまできっちり堪能。
エモーショナルを激しく掻き立てる、煽る演出じゃないのが、とても好印象でした。
これは映画館で観て正解だったなぁ。
レンタル待ちで自宅観賞だと余計な雑念入って、また違った印象持ったかもしれない。
オールタイムベスト級ですね。
さわやかな佳作
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