桜蘭高校ホスト部 : インタビュー
川口春奈&山本裕典、“ホスト部”流のおもてなしで世界中を笑顔に
累計1300万部を突破した葉鳥ビスコの大人気コミック「桜蘭高校ホスト部」が、実写版ドラマを経てスクリーンに登場する。日本有数のセレブ子女が通う名門・桜蘭高校のイケメン男子生徒で結成された“ホスト部”で繰り広げられるドタバタを描いた学園コメディだ。男子と偽りホスト部員として活動する校内唯一の庶民・藤岡ハルヒを演じる川口春奈と、陽気でお調子者なホスト部部長・須王環を演じる山本裕典に話を聞いた。(取材・文:山崎佐保子、写真:堀弥生)
三井のリハウスガールなど、若手女優の登竜門とも呼ぶべきCMに出演し、その無垢な存在感で注目を集めてきた川口。モデル業にとどまることなく、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(2011)で映画初出演を果たすなど、女優としても躍進を続けている。本作では、「映画化の話を聞いた時は本当にうれしかったです。ドラマは地域によって放送されていなかったところもあるので、これを機にたくさんの人々にホスト部を知ってもらえればうれしいです」と満面の笑みを浮かべた。
「大洗にも星はふるなり」「矢島美容室 THE MOVIE 夢をつかまネバダ」などで、個性的な役柄に挑んできた山本も「これまでもいろいろな作品をやらせていただきましたが、ドラマから映画化されたのは初めてだったのでとても気合が入っていました。ドラマ後すぐに映画の撮影に入れたので、時間をかけてみんなでひとつの作品をつくり上げたような感じ。クランクアップした時は、みんなと別れなければならないと思うと少し寂しかったです」と作品への思い入れは強い。また、「現場は本当にアットホームでした。スタッフとキャストの距離感がとても近くて、ひとりひとりの芝居にみんなが『いいね!』とか『こうしたらいいんじゃない?』って、常にリアクションや意見が飛び交っていて。スタッフは最初のお客さんのようなものだから、その反応を信用して演じていました」と固い絆(きずな)で結ばれていた。
「桜蘭高校ホスト部」は、学内屈指のイケメン6人がそれぞれの個性を生かし、女子生徒たちを“おもてなし”する部活動。ひょんなことからホスト部に迷い込んでしまった川口演じるハルヒは、おっとりとした性格ながら弱肉強食の学園で自らのポリシーを貫く、気丈な女の子。「すごく芯がある女の子。周りに流されないで自分の意志を貫き通せるところは素敵だなと思います。それでいて普通が一番というところは、自分自身にも似ているかもしれない」と共通点を明かした。
そんなハルヒが密かに恋心を抱くのが、山本演じる部員思いの部長・環。とんでもないおバカだが、憎めない愛らしさで女子を虜(とりこ)にしていく。「環は色々な顔を持っているので、すごくやりがいがありました。そのなかでも“バカ”の部分は誰にも負けたくないと思っていて。おバカぶりは張り切ってやったし、きちんとキメるところはキメて、メリハリを意識して演じましたね。ドラマを経て役が体に染み込んでいたから、僕らが映画で何をやっても正解のような気がしていました」
川口は、疑似家族のような絆で結ばれたホスト部を「本当に家族でした。最初の方は緊張してあまり話せなかったけど、撮影が終わる頃にはみんなとすっごく仲良くなっていた。スタッフさんも優しい方々ばかりで、あったかい現場でしたね」と振り返る。映画版には、「AKB48」の篠田麻里子扮するシンガポールからの短期留学生ミシェルが登場し、ハルヒと環を巻き込んだ三角関係に発展する。環に好意を寄せながら自分の気持ちに迷うハルヒだが、「ドラマでも恋愛の部分はあったけど、映画では特にそこに注目してほしい。三角関係で妬いたりするのは、演じていて新しかったし楽しかったです」と良い刺激を受けていた。
まるで本当の兄妹のように仲の良い2人。ともに過ごした半年間は、実り多きものだった。川口からは、「素の山本さんはすごく環っぽいですね。環みたいにずっとうるさいし(笑)。そういうところが好きですけど」と笑う。「とにかくすごく優しくて、ずっと近くで見ていて真面目でストイックな方だと感じました。うまく言葉にできないけど、本当のお兄さんみたいな存在でしたね」
「今回のプロモーションで『久々にハルヒに会える!』って、かなりテンション上がっていました(笑)」と山本はニヤリ。「ちょっとワガママだけど(笑)子どもだったり、時に大人だったり、半年間一緒に過ごして見えてきたことは多い。この半年の間に女優としてすごくステップアップしていくのを目の当たりにしたし、この年の吸収力はすごいなって改めて思った。妹のように感じていたので、その成長を間近で見られるのはうれしかったし、オレも負けないようにもっともっと良い芝居して、良い俳優になっていきたいと思えました」
「桜蘭高校ホスト部」のメンバーは、誠心誠意女子生徒をもてなすことで、学園に笑顔を振りまいていく。それでは今をときめく若手俳優2人にとって、演じるということはどんな意味をもつのだろうか。
「ホスト部って名前だけを聞くと、『え?』って感じがするかもしれないけど、実際はすごくあったかい人々で、『世界中のみんなが笑顔で、幸せで楽しくいられたらいい!』って人たちの集まりなんです。おもてなしでそれをまっとうするホスト部のメンバーってすごいと思う。いま私自身がそういう仕事をできているか分からないけど、そうありたいなと思っています」(川口)
「環を演じていると自分も楽しくなって、自然と笑顔になっていた。東日本大震災が起きてから、僕自身ちょっとでも気の休まる映画があったらいいなと思っていました。この作品はまさにそれ。作品自体があったかくて、くすっと笑えるところがたくさんあって、見ていて元気になれる。僕らが演じることでひとりでも多くの方が笑顔になってくれたらうれしい。俳優として演じることと、学園を笑顔にするためおもてなしの心をもつホスト部は、そういう意味で似ているのかなと思います」(山本)