孤島の王のレビュー・感想・評価
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実話をもとに・・・
絶対的な権力を持つ院長(スカルスガルド)や、陰湿な寮長ブローテン(ヨーネル)の下、厳格な規律の中で生活させられる寮生。言うことを聞かねば刑務所送りだぞ!などという子供を叱りつける少年院。暴力的で社会生活に馴染めないエーリング(ヘールスター)は最初から反抗的で、その都度体罰を受ける。6年間の収容され、やがて模範生として卒院をひかえていたオーラヴ=C-1(トロン・ニルセン)は彼に優しく接し、最初から脱走を企てていた彼の話を聞き、「俺が卒院してからにしてくれ」と懇願する。しかし、すぐに脱走。鍵のかかったボートハウスからボートを盗み、本土へと向かったのだ。あっけなく陸地で捕まり送り返されるエーリングだったが、寮生からは英雄視されることに・・・
一方、ひ弱なC-5はブローテンに気に入られ、皆が森で作業するのに対し、一人洗濯室で作業させられる。映像には表れてないが、ブローテンから性的虐待を受けて悩んでいたのだ。その反発は自ら手を傷つけるという行為に始まり、ついに入水自殺するまでに・・・。院長は「C-19が英雄視される行為をしたから、C-5までもが脱走したんだ」と頑なに事実を曲解したまま。院長はC-1から事実を聞かされ、ブローテンが解雇された・・・と思った寮生たちだったが、何とブローテンはまた戻ってきたのだ!ブローテンは院長が施設の予算を横領していた事実で脅迫していたのだ。
卒院となったC-1だったが、ブローテンの復帰する姿を見てキレた(少年たちにはその理由がわからない)。突然襲い掛かり、止めようとしたC-19も一緒になって乱闘に。独房に入れられた彼らだったが、そこも脱走し、それを目撃した一致団結し、反乱を起こす。規模は施設全体を巻き込むことになり、院長は逃げ、少年たちの天下となった。しかし、島に軍隊が押し寄せ、反乱は鎮圧。C-19とC-1は凍った海を歩いて渡ろうとするが、途中、C-19がクレパスに落ちて凍死・・・
文字の読み書きができない(?)エーリングとオーラヴは心を打ち解ける。エーリングの作る物語をオーラヴに伝え書き留めさせたのだ。「銛を3つも撃ち込まれても死なない巨大なクジラがいた。やがて、甲板員一人を飲み込んで、次々とやられていく・・・」云々。元々船乗りであったエーリング。罪状は語られてないが、多分人を殺してしまったのだろう。そんな修羅場を生きてきた彼の作る物語は生命力あふれるものになるだろう。船、船員、クジラと、少年院をそのまま比喩にした物語。その中でもクジラは何のメタファーなのか様々考えることができるのだが、いざ反乱が起こってみるとブローテンや院長ではなく軍隊だったのかとも思える。
さらに考えてみると、この少年更生施設そのものが世の中そのもののメタファーなのである。絶対権力を持つ者と、虐げられる者の対比。強烈な風刺にはなっていないところが映像的にも弱いのだが、この話自体が実話だというところで虚しくなってくる・・・
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